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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「仕事上いちばん気をつけていること」です。

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精神科の仕事って、他のどの領域より「患者さんと会話する時間が長い」と思っています。
なんだろ、患者さんと会話するしか看護判断する術がないんですよね。
今日の気分はどうだろうか、夜は眠れただろうか、最近変わったことはないか、イライラすることはないかなど……。
いろんなことを患者さんに聞いています。
このときに大切なのが「患者さんとの距離感」です。

物理的な距離もしっかり取ります。
なぜなら自分の身の安全を守れないときがありますから。
「パーソナルスペース」と言って、自分の腕が伸ばせる範囲は自分の安全なスペースなので、その範囲には容易に近づかないようにしています。

あとは患者さんとの心理的な距離感。
特に初対面の人にはいきなりタメ口で話したりもだめ。
どのあたりまで崩して話してよいかを探りながら話していきます。
相手の安心を守ってこその精神科看護だと思っているので、このあたりの「目に見えない距離感」もとても気をつけています。

距離感って目に見えないから、とてもむずかしいものがありますよね。
あとは人によって違うから、個別性がとてもむずかしい。
同じような対応を他の人にやってもうまくいかないこと、たくさんあります。
僕は精神科1年目のとき、かなり苦労した記憶があります。
先輩と同じように話したら患者さんから怒られたみたいな。
「え? 僕の対応のなにが悪かったのさ」って思いました。

新人のころって、患者さんとの距離が近ければ近いほど良い看護師だと思っていた時期がありました。
今思えば危険だなと思うんですが、当時は「少しでも患者さんの気持ちを知りたい」と思って必死だったのかもしれません。
結果として、患者さんを不穏にさせるスイッチをただ探しているだけみたいな、失敗の連続でしたね。
今となっては「距離を適度に置く」ことがプロの仕事なんだなって考えてます。
先輩たちがほどほどに距離を置いていたことがよくわかりました。

現在、「相手との距離を置く」ことが感染対策で重要となっています。
意図せず、この「距離を置く」ことが、患者さんとの距離を適切にしている気もします。

「距離を取る」。
簡単そうでとてもむずかしい看護技術だと思います。

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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ12年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

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