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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「患者さんの自己決定を支援する」です。

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はじめまして。行政の保健師ですが、最近の知見を得て、アップデートしていくために、いつも興味深く拝読しております。

テーマとして、患者さんの自己決定を支援する、ということについてお伺いしたいです。

それも、成人健常者ではなく知的、精神、身体などに障がいがある方、自己の過大評価をしている方への支援について、よろしくお願いいたします。


今回読者の方からテーマをいただきました。
ありがとうございます。
現場で働かれている方からのテーマです。
ちょっと緊張してしまいます(笑)。

患者さんの自己決定って、いろんな場面でありますが、私は精神科の病棟で働いてるので、こういう場面はよくあります。
まあ、病院という環境は特殊ですので、地域、在宅分野では当てはまらないかもしれませんが、私の考えを書いてみます。

その人の自己決定ってゴールはなんなのか。
そのための障壁はなにかを考えるのが支援者だと思いますが、もっとマクロな視点で、「この人はどんな環境にいるのだろうか」と考えることが大切だなと思います。
変な話ですが、支援者ってその人に対する「答え」を持って接したりすることありませんか?
「こういう支援が必要だから、こういう社会資源を用意して……」など、支援者だっていきなり支援できるはずはなく、準備が必要です。
それは心理的な準備も含まれます。
目の前にいる人が整形外科退院後で、松葉杖を使用し歩行もそこそこ安定し、年齢も若いのに「よし、介護保険だ」っていう答えを持ってくる支援者はいませんよね。
逆に、独居の高齢者が介護保険を一度も申請したことがないと相談してきたら、これはもう答えがでているようなもの。
「心理的準備」ができていると、人間は次の行動に安心できたり、スムーズにいけるので、準備しますよね。
その「心の準備」と患者さんの考えていることの不一致が、支援を難しくしたりします。
「いやいや、そんな高望みしても、あなたには無理だと思いますよ」なんて思っても直接的には言えず、結果として支援がおかしな方向に行くことがありますよね。
そのためにも、視野は広く、「この人はいったいどんな環境にいるのか」と整理して考える必要があると思います。

よくある「一人暮らし」というキーワードも幅広いですよね。
仕事に行っていながら一人暮らしなのか、近所にサポートする肉親がいる一人暮らしかでだいぶ違います。
高望みをする人、身の丈に合わないことを言う人って「誰かが助けてくれる」と思っている人が多いと思います。
近隣に迷惑かけても、両親が謝ってくれる、違う土地に両親がアパートを借りてくれるなど。それで自分が「自立した一人暮らしです」となっていると、普通は「え?」って思いますよね。でも「普通の感覚」って人によって違います。

私はよく「自分のものさしで相手を測らない」と口にします。
自分の常識って相手にとっての非常識だったりします。
だから「普通は」って言葉、使いやすいですが、その普通は自分にとっての普通であり、相手にとっては普通ではないと思っています。
だから「色眼鏡」を使わない。

あとは、最近自分に言い聞かせていることがあって、「がんばりすぎない」ことです。
がんばっても相手に裏切られたら、裏切りが大きいほど相手を不信に思ってしまう。
そのため良い意味での期待をしないようにしています。
これ、精神科だと必要なスキルだと思っていて、無理してなにかをやる必要はないし、そこまで自分ががんばることもしない。
なにかをやるなら他の人を巻き込んで大勢でやるほうが、良い結果を生むと思います。
自分がかかわって難しそうな課題は、積極的に声に出して他の人に応援をお願いする。
時に自分のスキルではどうしようもできないことは、担当を変わってもらうぐらいのことが必要だと思います。
仕事ができないのではなく、ヘルプを出せる人のほうが、なにに困っているのかわかりやすく、周りも理解されやすいです。
「声を上げることは恥ずかしい」と思わず、積極的に仲間を巻き込んでみましょう。
自分だけで抱え込まないこと、大切ですよ。

結局のところ、患者さんの思い描く世界と、支援者が思い描く世界の相違が問題になりますよね。
現実を理解していない患者さんは多くいますが、実際支援者が高望みしているケースもよくあります。
今一度、患者さんの立場に立って、患者さんの希望を考えていくことが大切かもしれません。
男性患者さんの一人暮らしを支援するってなっても、昔は家事ができないとなんて考えてましたが、今は買い物の仕方と電子レンジの使い方さえ覚えれば、なんとかなります。
移動もICカードを持ってもらい、駅やお店でチャージできることを教えれば、あとは障害者手帳を見せれば精算できます。
現金の管理ができない人にとってとても有効なツールだと思っています。

テーマを送ってきていただいた方は、現場でとても苦労されているように思いました。
答えにはなってないかもしれませんが、もしなっていないようであれば、もっと深く書いていこうかと思っております。
どんなことでも構いません。
なにかありましたら、またご連絡ください。

また、他にもテーマがありましたら、悩みに悩んで書いていきますので、よろしくお願いいたします。

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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ12年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

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