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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回は「仕事で季節を感じるとき」を綴っていただきました。

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ICUで働いていたときは、入院される患者さんの疾患で季節を感じていました。
春は精神系の人(オーバードーズ、双極性障害の躁転)、夏は熱中症、冬は梗塞系。

とくに「今年もシーズンが来たねぇ!?」から始まる、冬の梗塞はすさまじい。
急激な気温の低下で、血管が詰まる詰まる。
日勤続きなのに朝仕事に行ったら“みんなはじめましての患者さん”ってこともしばしば。

一方、訪問看護での季節の感じ方はまったく違いました。
なんというか“利用者さんの生活”にかかわるので、仕事といえど普通に生活しているかのように季節を感じます。

それは利用者さんのお宅に向かう途中から。
じっとりとした梅雨の空気、カラッとした秋晴れ、空気中に舞う、花粉。
シーズンごとにガラリと変わる。

見える景色も季節に合わせて変化します。

春は桜の木が、枯れ木から、桜が咲いて、ちょっと禿げた桜になって、萼だけになって、毛虫が出てきて、青々とした葉っぱになって……。
秋は紅葉が街に見事な彩りを加えて……。
時には金木犀の香り、銀杏の匂いなどなど添えられ、嗅覚までも刺激される。
同じ場所なのに七変化(笑)。

日本ならではのこういう季節の移ろいは情緒があって良いですね。
喜ばれる利用者さんもとても多かったです。
みんなほっこりとした表情するんですよ。

訪問内容にも季節らしさが出ます。
一緒にお庭の枯れ葉掃除をしたり、レモン狩りをしたり。
デイサービスで作ったシーズン物を楽しそうに見せてくださる利用者さんもいます。

何かを作成するといったような、こういった介入は訪問看護の時間内ではなかなかできないので、本当にありがたいです。
利用者さんもとてもうれしそう。
どの作品も、優しさが溢れるような、穏やかな表情なんですよね。
作品を見るのがいつの間にかわたしの楽しみにもなっていました。

訪問が終わってからいただく利用者さん家族からの差し入れ。
ここにも季節があらわれる。

夏には冷たいお茶だったのが、だんだんあったかいお茶やカフェオレになって。
年内最後の訪問時にはビールをくれる方もいました。
(もちろん、泣く泣くお断りしました笑)

子どもの日には柏餅、クリスマスシーズンにはクリスマス仕様のクッキー、などなど。
そういったことが禁止されている事務所もあると思うのですが、わたしのところは「それも看護の1つだから」と許可をいただいているので、過剰にならない範囲で一緒にいただきました。

“日常生活をサポートする仕事”だからこそ、同じように季節を感じられます。
生活していくうえで季節は切り離せないものですから。

個人的にですが、同じ場所で生きているんだなって感じられて、なんか“良い”。
本当に、“良い”。
そんな感じです。

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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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