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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回は「最後の日の過ごし方」を綴っていただきました。

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最期の日。

うれし涙なのか、
悲しみの涙なのか、
後悔の涙なのか、
感謝の涙なのか、わからない。
涙があふれるって、こういうことなんだ。
頬を伝う、あたたかな涙。

目はほとんど開かないけど、音は聴こえてくる。
情景は目に浮かぶ。とても鮮やか。音って十分すぎる情報なんだといまさら知った。
思い出がたくさん蘇るけど、声を出す余力はない。
話したいことがたくさんあるのに、話せない。
心の声は届いていることを願う。
おしゃべりなわたしが話せないからって、長く連れ添った人たちがここぞとばかりに話している。
鎮魂歌にはうるさすぎるくらいだが、いまはこのくらいのほうがかえって良い。
悪口だって聴こえてるんだからね。
でもなんだろうね、優しい悪口。
声、震えてる。

いつも握っていた手に、今は握られている。
あたたかいし、心地よい。

わたしは、誰かのためになる人生を送れただろうか。
お墓の心配とか、お金の心配とか、みんなの今後とか、最後の最後まで心配事はたくさんある。

できることならもう少しみんなとすごしたかった。
みんなの成長、生き様を見たかった。
けど、どうやらそれもここまでだね。
ここまで来れない人もたくさんいるから、そのことに感謝しよう。
誰もが通った道、単純にわたしの番が来ただけ。

それにしても本当に幸せな人生だった。
みんなも幸せになってね。
人として間違ったことだけは絶対せず、感謝の気持ちを忘れずにね。

本当にありがとう。

……

……

……

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現実はこんなに綺麗じゃないと思うし、うまくいかない。

けど、少しでもこんな感じであたたかい最期を遂げられるよう、日々歩んでいきたい。

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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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