看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。
「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。
今回のテーマは「2025年上半期オススメの1冊」です。
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最高気温が体温を超える猛暑真っ只中になりましたね。
外に出る時は紫外線対策、暑さ対策、通気性…色々考慮しているとなんだかんだ荷物多くなっちゃいませんか?
対策が上手くできているのか、夏バテになりがちな私もなんとか生きております……
さて今回のテーマは「2025年上半期オススメの1冊」。
資格の勉強をしてるのもあってほぼ参考書しか読んでなかったので数が少ない中から選びました。
『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』
(クロスメディア・パブリッシング/ピョートル・フェリクス・グジバチ著)
本の冒頭、「天気の話は雑談の常套句だったのです」という一文に思わずうなずいてしまいました。
私自身、「今日暑いですね?」を会話の入り口に使っていることがとても多かったからです。
この本では、雑談を「ただの世間話」ではなく、
信頼関係を築き、相手の価値観や本音を引き出すための意図的なコミュニケーションスキルとして位置づけています。
医療現場、とくに終末期のケアに携わる私たちにとって、この視点はとても大切です。
患者さんの多くは「ここが自分の最期の場所」と感じながら日々を過ごされています。
アセスメントやバイタルサインのチェックだけでは見えてこない、“その人らしさ”が、ふとした会話の中に現れることがあります。
たとえば、「食事は召し上がれましたか?」と尋ねたとき、
「少ししか食べられなかったけど、今日は娘が来るから起きていたくてね」
と返ってくることがありました。
この一言には、「今日は何を大切に過ごそうとしているか」が、自然ににじんでいます。
“家族と過ごす時間を自分の意思で選びたい”、その想いに触れたとき、私たちの関わりもまた変わっていく気がします。
この本では、一流の雑談に含まれる5つの要素が紹介されています。
①状況を「確認する」
②情報を「伝える」
③情報を「得る」
④信用を「作る」
⑤意思を「決める」
看護の現場でも、これらは日常的に行われています。
けれど、それを“業務”としてではなく、“その人の人生にふれる行為”として行うかどうかで、関係性の深まり方は大きく違ってきます。
雑談の上手な先輩は、患者さんに名前で呼ばれることが多く、自然と心を開いてもらっています。
決して馴れ馴れしくない、むしろ丁寧な言葉づかいのまま、ふっと距離を縮める力。
それは「余裕」ではなく、「意識と姿勢」によって生まれているのだと思います。
雑談にはもうひとつ大切な役割があります。
それは、“小さな変化”に気づくための観察の時間であるということ。
いつもより声が小さい、目が合いにくい、話がかみ合わない--その変化を感じとれるのは、普段からしっかり向き合っているからこそです。
雑談は、決して時間の余白ではなく、
私たちが届けるケアの中に組み込まれている「心の技術」。
そして、終末期における“人生との対話”の入り口でもあると、私は思っています。
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fractale~misato~
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推し活を生きがいとしているフッ軽な看護師。やりたいことを見つけて地方から上京するくらいにはとてつもなくアクティブ。看護師や医療職の交流会にも遠方からでも参加し、視野の広がりや人との繋がりを感じるのが好き。慢性期、回復期に3年、上京後糖尿病専門病院、整形外科病棟、コロナ関連の仕事、訪問看護等を経て終末期へ。その奥深さに沼って終末期ケア専門士やELNEC-Jなど積極的に知識を深めようと全力。カメラを抱え旅に出たり、街歩きするのが趣味。基本的にインドアの趣味を持っておらず、休みでも仕事でも1万歩超えレベルの散歩好き。
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