著者:川下貴士(松蔭大学看護学部精神看護学助教)
t-kawashimo@shoin-u.ac.jp



皆さんどうも。
ついに僕たちが書いた本が発売されました!

全国の本屋さんに僕たちの本が並んでいると考えると感慨深いものがありますね。
幸いにして少しずつ読者の皆さんからも反響を伺っています。
うれしい限り。
ぜひ下記の『この書籍の購入・詳細はこちら』のリンクから立ち読みだけでもいいので、読んでみてください!

さぁここからは僕の黒歴史です。
いや財産ですね。
忘れもしない初めての精神看護学実習。

精神科のことは右も左もわからない。
精神科病院に行ったこともなかったし、精神疾患をもっている方とかかわったこともありませんでした。
ドキドキとワクワクで迎えた実習初日。

病棟に入り、オリエンテーションが始まりましたが、指導者さんが急にスタッフに呼ばれ、病棟ホールに僕たち看護学生だけ取り残されました。
そのとき…
看護学生という見新しさなのか…1人の患者さんが僕に近寄ってきました。
僕はどうすればいいのか戸惑っていましたが、患者さんから「キャッチボールしよう!」と急に声をかけられ、患者さんは僕に向かって、ボールを投げる仕草をします。
(え!? 急に何?? どうすればいいの?)

僕の心境なんてかまわずに患者さんは「早く、早く投げてよ!」とニコニコしながら、また僕のほうへボールを投げる仕草をします。

小中高と野球少年だった僕にボールを投げてくる…もう二度と野球はやらないと誓っていたのですが、野球少年としてこころの火がつきました。
これは投げ返してあげないと患者さんに悪いよね、と判断し、投げてくれたボールをキャッチして、投げ返す仕草をしました。
するとそこからは、エアーキャッチボールの始まりです。
止まることなく続けていると…
指導者さんが戻ってきて、エアーキャッチボールを中断させ、僕へ一喝!
「患者さんを興奮させてしまうから、そういうことはやらないこと!」
まさかの実習初日に大カミナリ!

何も知らなかった僕が悪いんですが、今でもあのときのことは鮮明に覚えていますね……。


あの日をとおして、僕は精神科看護におけるコミュニケーションの難しさをあらためて感じました。
患者さんは間違いなく楽しそうな顔をしていたんです。
だけど、楽しいだけじゃダメな場合もある。
精神疾患を理解したうえで患者さんとコミュニケーションを図る大切さを指導者さんに教えていただきました。
あのときの指導者さん。
あれから何十年と経ったけど、僕もすこしだけ精神科看護師として成長しましたよ!

少しだけ宣伝!
日本看護協会出版会『コミュニティケア』誌9月号から「精神科訪問看護へようこそ」の1話が連載されています。現在、10月号の2話が発売されたばかりです。全12話の予定ですので、興味のある方はこちらの雑誌も読んでいただけるとうれしいです!

※本記事に登場するスタッフや患者さんなどは、著者の体験に基づくフィクションです。実在するスタッフ、患者さんなどとは関係はありません。
※感想や質問などございましたら、メールアドレスまで連絡していただけるとうれしいです!

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