著者:川下貴士(松蔭大学看護学部精神看護学助教)
t-kawashimo@shoin-u.ac.jp



皆さんどうも。
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今回は患者さんとの失敗談です。
准看護師となって1年目、はじめて精神科病院で働いているときです。
当時、僕は急性期病棟に所属していました。
少しずつ業務にも慣れ、夜勤も独り立ちできるようになったとき、1人の男性患者さんに出会います。
僕よりも年齢は若く、背丈は高く、体格もドッシリとした患者さん。易怒性・衝動性が強く、興奮してしまうと男性看護師数人で対応しなければいけませんでした。夜勤のスタッフが思うことは「今日は落ち着いていますように」が合言葉で、僕も夜勤のときはいつも思っていました。

そんなある日の夜勤時のことです。
僕はいつもどおり夜勤前に患者さんへ挨拶回りに行くと「おー!川下くん。今日、夜勤よろしく!」と例の男性患者さんが穏やかに返答し、今日は落ち着いてるなとホッとしたのも束の間。
夕食後にナースステーションで看護師に対して、大声を荒げている男性患者さん。
急いで理由を尋ねると「今日からタバコ2本吸っていいと言われたのに、1本しか貰えなかった!」と激怒。
※当時の精神科病院は病棟内でタバコを吸うことができ、患者さんによっては、タバコを1本ずつこちらで管理していました。
夜勤の申し送りでタバコの本数が変更になったことは聞いてないし、そのことを本人へ伝えるとさらに逆上。
「今日、師長からタバコ2本にしていいって言われた!何も聞いていないお前が悪いんじゃない?1年目だから何も知らないんだろうね!」とさらに興奮して、僕へ訴えてきます。そこからは男性患者さんと僕で口論になり、僕も感情的になってしまったので正直、何を言ったのかあまり覚えてません。1つ確実に言えることは、かかわりとしては、明らかに間違っていたということです。

精神科で働いているとスタッフに対して、挑発的な言動を繰り返す患者さんもいます。
僕が未熟であるがゆえに、今回は患者さんにつらい思いをさせてしまいました。
この出来事をとおして、患者さんが感情的になってしまうと僕も感情的になってしまう、僕は短気なんだと自分を知るきっかけでもありました。
この短気をどのように克服していけばいいのか……、この男性患者さんが入院している限り、また同じことも起こり得るわけです。
この短気とどう向き合っていくか、すごく悩んでいたときに上司から1つの助言を受けます。
「同じ土俵に上がらない。第3者の視点でかかわることが大事ぞ」

今でいうメタ認知に近いかもしれませんね。
約20年前の話なのに上司すごい! 当時の僕は感情的な患者さんとかかわるとすぐに僕も感情的になってしまっていたんですよね。そして、そのあとすごく疲れてました。
感情的な患者さんの前にたつときほど冷静に。
この上司の言葉がなければもしかすると僕は精神科看護師としてやっていけなかったかもしれません。
すごい昔の話になりますが、今でも忘れられない僕を成長させてくれた言葉です。
そして! 何とその上司からの教えが僕の著書にも載っているんです!
目次欄20.『あなたは名実況者!』はまさにこの上司からの教えを書いているんです。
短気な僕へもう1つ上司が教えてくれた大切な言葉。続きが読みたい方はぜひ著書を手に取ってみてください!

もう定年を迎えているかな? 元気にしているかな?
僕はいまだに精神看護に夢中ですよ!

少しだけ宣伝!
日本看護協会出版会『コミュニティケア』誌9月号から「精神科訪問看護へようこそ」の1話が連載されています。現在、10月号の2話が発売されたばかりです。全12話の予定ですので、興味のある方はこちらの雑誌も読んでいただけるとうれしいです!

※本記事に登場するスタッフや患者さんなどは、著者の体験に基づくフィクションです。実在するスタッフ、患者さんなどとは関係はありません。
※感想や質問などございましたら、メールアドレスまで連絡していただけるとうれしいです!

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