著者:川下貴士(松蔭大学看護学部精神看護学助教)
t-kawashimo@shoin-u.ac.jp



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「私、研究職目指してないんで!!」

今回は看護研究指導時の臨床で働く看護師さんとの失敗談です。僕が大学院修士2年目のころ、病院で看護研究の指導を依頼され、そのときに言われたのが冒頭の言葉です。
当時の僕は今よりも研究に対して前のめりで、すべてを研究に注いでいました。
私はいつものように看護師さんの研究計画書に目を通していると……
「この方法だと研究目的を明らかにすることはできない」
「この対象者の選定では、十分なデータが収集できない」
「このアンケートだと、目的に沿った回答を得ることができない」など

皆さんもすでにお気づきでしょうが、『〇〇できない』とすべて否定していました。
臨床の看護師さんの研究計画書の隅から隅まで目を通し、すべては素晴らしい研究になってもらうために全力でやってましたが………
これは単純に僕が大学院で看護研究を学んでるという万能感に浸って、知識という武器を他者に振りかざしていただけだったんですね。
その後、その看護師さんは指導日に姿を現すことはありませんでした。

大学院で学んだ知識はいったい何のためにあるのでしょうか?
自分のため?
スタッフのため?
患者さんのため?

今ならこれまで得た知識を用いて臨床の看護師さんの研究テーマをどのように看護研究として成立させることができるか、一緒に考えることができますが、あのころの僕は圧倒的にコミュニケーション能力が欠如していたのでできませんでした。あのときもっと僕が違う言い方をできれば、もっと楽しく看護研究を伝えることができたのになと今でも後悔しかありません。

正しいことより、大学院で学んだ知識より、まずはコミュニケーション。
コミュニケーションを通して、研究者がどのような研究を行いたいのか、本人の思いをまずは理解すること。
本人が一生懸命考えてきたことを否定ばかりしていては、信頼関係も何も生まれません。正しいことがすべてではないということをこのとき、はじめて学びました。
この経験は今でも僕の教訓です。
他者から思いもよらぬこと言われたときは、時間が経ってからでいいので、自分の言動や話を聞く姿勢を一度、振り返ってみるといいかもしれません。

正しいことを伝えるよりもまずは他者の思いを理解しようとする姿勢が大事。

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※本記事に登場するスタッフや患者さんなどは、著者の体験に基づくフィクションです。実在するスタッフ、患者さんなどとは関係はありません。
※感想や質問などございましたら、メールアドレスまで連絡していただけるとうれしいです!

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