著者:川下貴士(松蔭大学看護学部精神看護学助教)
t-kawashimo@shoin-u.ac.jp
皆さんどうも。
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今回は病棟で働いていたときの先輩との失敗談です。愚かな僕をどうか笑ってください。
僕が働いていた精神科病院は施設内に畑がありました。土を耕すトラクターの操作を覚えたのもこのときで、患者さんと一緒に作物を育て、一緒に食べるという文化がありました。そんなある日、いつものように僕は患者さん数名と畑へ向かい、じゃがいもの収穫をしていると、トラクターの操作を教えてくれた師匠(先輩看護師)も畑に来て、一緒に収穫を手伝ってくれました。
「今日のじゃがいもは上品ばい!こりゃ粉ふきいもにしたらうまそうやね! みんな食べる??」と上機嫌に患者さんに話し、思わず僕も患者さんと一緒に「マジですか!? 僕も食べたいです!」と言いました。
早速、師匠は採りたてのじゃがいものを調理場へもっていき、手際よく料理をします。患者さんと一緒に種から育てたじゃがいもに感動しながら粉ふきいもを食べました。どうやら患者さんも自分が育てたじゃがいもを食べるというのは格別で、とても良い表情をしていました。
そんなこんなでたくさん採ったじゃがいもを師匠は、次々と料理していき、大皿いっぱいになった粉ふきいもを患者さんと一緒に僕はパクパク食べます。
「川下くん!おいしそうに食べるね!まだあるけど食べる?」
「はい! おいしいです!!」とお腹いっぱいなのに僕は師匠に嘘をついてしまいました。
今となっては、じゃがいもをいくつ食べたのか記憶はありませんが、おそらく短時間でじゃがいもを10個ぐらい食べたと思います。
その後、僕がどうなったのか? 皆さんなら想像がつきますよね。
僕はその後、腹痛と嘔吐を繰り返し、その日の勤務を早退し3日ほど休むことになりました……。僕は師匠にも病棟にも迷惑をかけてしまったわけですね……。
ひとの善意は断りにくい。
あのとき師匠から「まだ食べる?」の問いかけに「お腹いっぱいです。ありがとうございます!」と自分の思いを伝えることができれば、このような結果にならなかったと思います。自分の思いではなく、師匠の気遣いを優先したがためにこのような事態を招いてしまいました。今となっては笑い話にできますが、当時はこのような行動をとってしまった自分がとても情けなく、いろんな方へ迷惑をかけてしまったので、とても後悔していました。当時はひとの善意に対して、うまい断り方を知らなかったんです。
断るというのは、とても勇気がいることです。いろんなひととコミュニケーションを図るなかで、断りたい場面、断りにくい場面などさまざまな場面があると思います。決して断ることを我慢するのではなく、自分の思いを伝えることもときに重要です。その際にその人がなるべく傷つかないような断り方で伝えるということが、コミュニケーション技術の見せ所だと僕は思っています。
皆さんのうまい断り方はどんな方法ですか?
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※本記事に登場するスタッフや患者さんなどは、著者の体験に基づくフィクションです。実在するスタッフ、患者さんなどとは関係はありません。
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