著者:小野坂益成 (松蔭大学看護学部精神看護学講師)
皆さん、こんにちは。
本が出版されてから、もうすぐ4カ月が経ちます。
振り返ると、本当にあっという間ですね。
あらためて読み返してみると、自分で「これ、使える!」と思うワザや考え方がたくさん詰まっています。
ただ、本にしろWeb掲載にしろ何かを発信するというのは、とても考えさせられることが多いですね。とくに「誤解されないように」と気をつけているところです。
さて、今回は「思い込みほど怖いものはない」というテーマで、私が20代のころに経験した失敗談をお話しします。
今回は、そんな失敗談です。
皆さんは、もっとよく知りたいと思う人を飲み会に誘うとき、どのように誘いますか?
前回もすこしお話ししましたが、私は当時、フットワークが軽く、さまざまな活動に積極的に参加していました。プールやサークル活動など、誘われたら気軽に応じるタイプで、誘われたら基本的に参加していました。飲み会も同じで、誘われることが多かったですね。
そうした活動を通じて、たくさんの方々と出会い、さまざまなお話を聞く機会がありました。そのなかでとくに興味を持った先輩がいて、ぜひお話をもっと聞きたいと思い、「今度飲みましょう!」と声をかけて連絡先を交換しました。
「アドレスを交換できた!」とワクワクしながら、その後すぐに以下のようなメールを送りました。
「いろいろなお話を聞けてとても楽しかったです。今度飲みに行くお話をしましたが、いつがご都合良いですか?」
すると、こんな返信が。
「そんな約束したっけ? でも予定を合わせて飲みましょう。もし良ければ、ほかの友だちも誘ってくださいね」
私は「あれ、約束したよね?」と戸惑いましたが、忙しいなかでのやりとりだったからしかたないかと思いなおし、また記憶が曖昧になることもあるだろうと深く考えず、日時を調整しました。そしてほかの友人も何人か誘いましたが、予定が合わず、結果的にその先輩との2人飲みとなりました。
当日、期待に胸を膨らませて店に行くと、席に座っていたのは……先輩とはまったくの別人。しかも、その方はと~っても偉い先生でした。
そうなんです。
私はメールを送る相手を間違えていたのです!
先輩ではなく、その先生に「飲みに行きませんか?」とメールしてしまっていたのです。
当時はまだ駆け出しで、メールの礼儀や基本をよく理解しておらず、宛名を入れていなかったため、この間違いにまったく気づきませんでした。
驚きと戸惑い、そして動揺。
いま思い返しても、言葉にならない気持ちです。
ですが、その場では必死に動揺を隠し、先生との飲み会を始めました。
(もしかしたら先生にはバレていたのかもしれませんが……)
結果として、その先生とのお話は予想以上に刺激的で濃密な時間でした。看護、医療、教育といった幅広いテーマについてお話を聞き、自分でも気づいていなかった視点を教えていただきました。その濃密な時間は、私のキャリアの方向性を決定づけるものとなりました。
この失敗談は今では笑い話になり、その先生とは良い関係を築けましたが、一歩間違えば大きなトラブルになっていたかもしれません。
思い込みや先入観は、ときに私たちの判断を狂わせ、大きなミスを引き起こす原因となります。
コミュニケーションにおいて、勘違いや先入観といった「ボタンの掛け違い」は、誤解や対立を招く原因になりがちです。今回はメールでの勘違いがきっかけでしたが、言葉の足りなさや価値観の違いでも同じようなことが起こる可能性があります。
この経験から私は、とくにコミュニケーションにおいて「思い込みの怖さ」を深く学びました。相手の状況や自分の行動を丁寧に確認し、慎重に進めることが大切です。
どうか皆さんも、思い込みには気をつけてくださいね。
【根拠】
確証バイアス
自分が信じていることや仮定していることを裏付ける情報ばかりを集めたり重視したりする心理的傾向です。そして、自分の考えと矛盾する情報は無視したり過小評価したりすることもあり、それにより判断が偏りやすくなり、現実を客観的にとらえることが難しくなります。
今回の出来事は、「先輩にメールを送ったはずだ」という思い込みや「約束したっけ?」といった違和感を「先輩」に送っているという先入観から無意識に無視をしていたということが考える。
皆さんも、もしかしたら気づかないうちに違和感を無視していることがあるかもしれません。「本当にそうかな?」といった振り返りや、事前に確認をすることでそのようなバイアスに気づけるかもしれません。
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