著者:小野坂益成 (松蔭大学看護学部精神看護学講師)
「口が回る」って言葉、ありますよね。よく喋るとか、話し上手って意味で使うことわざです。私はどちらかというと……物理的に口が回らないタイプです。流暢さの問題じゃなくて、滑舌が悪いんです。
小さいころからそうでした。保育園の発表会などの自分の声を録音で聞いたとき、胸がキュッと締め付けられるような感覚を思い出すんですよね。
滑舌って、自分では気づかないことが多い。けど、周りにからかわれると「あ、そうなんだ」と気づかされる。小学校で周りから「何て言ったの?」と言われ、笑いが生まれるなど、教室の空気が変わる。そんな場面が、今でも記憶に残っています。
でも、それはコミュニケーションの欠点なのか。
生まれつきで簡単に変えられないなら、嘆くより利点に変える工夫を考えたほうが、楽だと思うんです。
私は滑舌が悪いし、もともと話すのが得意じゃなかった。だから、結果として聞き手に回ることが増えた。
相手の話を最後まで遮らない。沈黙が苦にならない。相手が言葉を探しているときに、こちらが焦って補完しないことで、相手が自分の言葉を見つけられることがある。そういう小さな意識が、信頼を生む場面を何度も見てきました。
そして、「滑舌が悪いなら、発声をしっかりすればいいじゃないか」って思って、演劇部に入ってみたこともあります。
また、自意識が過剰になると、会話はぎこちなくなる。
「変に思われたらどうしよう」と考えすぎて、言葉が出てこないこともありました。
そこで、“失敗してもいい”、“変に思われてもいい”と考えるようになりました。笑いになるしって。“失敗しちゃいけない”、“きちんとやらなければ”という想いが強くなるとよけい上がるんですよね。
場の空気を読むのは大事です。けれど、気にしすぎると自分を見失う。
相手の表情や声のトーンを見ながら、自分のペースを保つ。
結論として、自分の特徴(欠点?)は道具になる。
ハサミも使いようでいろいろできるけど、話し方の特徴も使いよう。滑舌が短所に見える場面は確かにある。けれど、聞き手に回ることで得られる洞察や、言葉を選ぶ慎重さは、ちゃんと長所になります。大事なのは、その特徴をどう活かすかを自分で設計すること。
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