書籍『２級３級合格！心電図読み方ルールマスター』は、心臓の解剖や心電図の基礎をさらっとおさらいし、「心電図を読み解くルール」を示して、それをどんなふうに使って実際に心電図を読み解いていくのかを解説、さらに実践問題50問にも取りくめる充実の一冊です。
本連載は、本書に収載されている「心電図ひよこの会からの挑戦状：問題演習」の一部を取り上げつつ、本連載のために新たな問題を追加していく「出張版」です。
さて、今回の挑戦状は……

〈挑戦の前に〉
※各級の出題基準は心電図検定の要項をご確認ください。
※波形に記録条件が記載されていない場合は、標準感度10mm/mV、標準記録速度25mm/s として考えてください。

Q12

10歳代、男性。学校検診受診時に記録された心電図である。
この心電図から考えられるものとして最も適切な選択肢を１つ選べ。
【推定難易度：1級レベル】


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①ブルガダ症候群
②3枝ブロック
③心房中隔欠損症
④心室中隔欠損症
⑤動脈管開存症

正解はこちら

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［　③ 心房中隔欠損症 　］

V₁～V₂でQRS波が分裂し、Ⅰ、aV_L、V₅、V₆でS波が目立つ。QRS幅は、わずかに3マス（0.12秒）を下回っているように見えるので不完全右脚ブロックの波形。また、aV_F誘導でR波よりもS波のほうが少し深くなっているので、軽度左軸偏位が見られる。学校検診などで不完全右脚ブロックが見られた場合、心房中隔欠損症の可能性を念頭におく必要がある。

心房中隔欠損症とは、心房中隔に欠損孔を認める先天性心疾患で、新生児期の先天性心疾患の約10％程度を占めると言われている。心房中隔欠損症では左右短絡により右室に容量負荷がかかる。比較的、心雑音が小さいことが多いため見逃されて学童期や成人になってから発見される場合がある。

では、心房中隔欠損症において、なぜ不完全右脚ブロックになるか？

心房中隔欠損症では、拡張期に欠損孔を通じて左房から右房へ血液が短絡する。拡張期なので、右房へ短絡した血液はそのまま右室に入る。つまり、右室に容量負荷がかかる。この結果、右室が拡大・伸展されると同時に刺激伝導系の右脚も引き伸ばされることにより、不完全右脚ブロックが生じる。

②のcrochetage型とは、「QRS 波の始まりから 80ms内に含まれR波の上行枝や頂点近くで急速に上下し、典型的にはM型もしくは二分するような波形」と定義づけられている。

④の不連続性T波、もしくは孤立性T波とは、
　・不連続性T波：V₁～V₆誘導にかけて、陰性から徐々に陽性に変化するのではなく、いったん陽性に変化したT波が再度陰性に変化し、再び陽性に変化する。
　・孤立性T波 ：V₃・V₄誘導のみ陰性T波
とされている。

本症例では、不完全右脚ブロックを呈しており、軽度左軸偏位が認められるため、心房中隔欠損症の一次孔欠損型が疑われるということになる。また、V₁誘導にて先鋭化したP波が見られるので、右房負荷が少しあるのかもしれない。

今回は心電図から疾患を推測する問題にしてみました。各心電図所見については、その成因を『2級3級合格！心電図読み方ルールマスター』でフカボリ説明しているので、ぜひ手に取ってご覧ください！！

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発行：2025年7月
サイズ：B5判 224頁
価格：3,080円（税込）
ISBN：978-4-8404-8822-8
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