「消化器の術式は難しくて理解できない……」。そんなお悩みも『消化器ナーシング』のこの連載で解決! 消化器外科医のおぺなか先生が描くリアルで臨場感あふれるイラストで、まるで “実際の手術を覗いているように”術式が理解できます。術式がわかれば、起こり得る合併症の危険も見えるはず。連載を通して、消化器手術を極めましょう!

ポイント解説
「授動」「郭清」「吻合」! 消化器外科手術のキホンが詰まった術式です!

Point!右半結腸切除術とは

主に回盲部から上行結腸に位置する大腸がん、または憩室炎などの良性疾患に行われる術式です。大腸がんの手術の場合、切除範囲の腸管の腹膜/後腹膜との癒着をできるだけ剝がし(=授動)、腫瘍の部位や進行度に合わせた腸間膜の切除(=郭清) を行います。この、「授動」と「郭清」を正しく行うことで、大腸がんが取り残されることなく摘出されます。摘出後の「吻合」は、一般に体腔外に断端を引き出して自動縫合器を用いた機能的端々吻合を行います。「授動」「郭清」「吻合」と消化器手術のエッセンスが詰まった、若手外科医が必ず習熟すべき基本術式です。

手術は今や腹腔鏡手術が中心となっています。いちばんの山場は上腸間膜動静脈周囲のリンパ節郭清! 取り残しがないようにリンパ組織を血管から丁寧に剝がし取ります。ここで注意すべきは血管損傷で、ひとたび出血すると腹腔鏡下では止血困難なほどの大出血をきたすことがあります。場合によっては開腹手術になってしまうことも……。十分な解剖の認識と慎重な剝離操作を求められる場面です。

Check!起こり得る合併症

●臓器損傷
結腸や腸間膜を腹膜から剝離する際に、誤ってほかの臓器を損傷してしまうことがあります。右半結腸切除術で特に注意すべきは、尿管と十二指腸です。ともに腸間膜の背側の後腹膜下に位置しており、授動・郭清の際に損傷する可能性があります。外科医は臓器損傷を避けるために、常に臓器間の位置関係を頭にイメージしながら手術を行っています。

●縫合不全
吻合部から内容物が漏れてしまうことを指します。右半結腸切除の場合、小腸と横行結腸の吻合部から便汁が腹腔内に漏出するため、腹腔内での膿瘍形成や腹膜炎の原因となります。微小な縫合不全であれば抗菌薬治療のみで改善が期待できますが、重篤な場合は再手術を要します。術後の突然な発熱や腹痛には要注意です。

●腸閉塞
術後一時的に腸の動きが悪くなり、腸液が流れにくくなることがあります。絶食で自然によくなることが大半ですが、時折、腸管の癒着やねじれにより物理的に流れにくくなる腸閉塞もあり、自然に改善が期待できない場合や絞扼による腸管壊死が疑われる場合は緊急手術が必要になることもあります。

ナースへのお願い!

術後の腸閉塞が怖いこの手術。僕が思ういちばんの予防策は「術後早期の離床」です。ひとたび腸閉塞になると経鼻胃管を入れられ入院期間も延び、患者さんもスタッフもつらいばかり……( 涙)。患者さんへの積極的な離床の呼び掛けを、ぜひお願いします!

おぺなか
現役消化器外科医
Twitter→@ope_naka




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