戸﨑加奈江
愛知県がんセンター 看護部副部長/がん化学療法看護認定看護師

看護師歴30年。看護師になってからずっとがん看護に携わっている。患者さんを中心に、患者さんの思いを支 えられる看護をしたいと思っている。




「看護師さん、泣かないで」

この言葉は、20年くらい前に30歳代の女性の固形がん患者さんから言われたひと言です。それは、何かの処置の際に1対1になったときに「少しでも長生きしたいから、つらい治療もがんばっているの」と、いろいろな思いを話してくれるのを聴きながら、私が思わず流してしまった涙を見た患者さんからの言葉です。

20年くらい前の固形がんの薬物療法といえば、副作用もつらく、治療効果も高くないといった状況でした。がん薬物療法を医師の指示どおりに点滴を追加しているだけと思っていた当時の私は、看護師が患者さんにできることはあまりないと思っていました。その患者さんが副作用に苦しみながらも家族のために少しでも長く生きたいとがんばっている姿に、胸を打たれたと同時に、自分の非力さを思い知った時間でした。このできごとが、がん薬物療法というつらい治療をそれぞれの目的のためにくり返し行う患者さんを少しでも支えたいと、がん化学療法看護認定看護師を目指すきっかけとなりました。

ここ数年でがん薬物療法は大きく進歩しています。殺細胞性抗がん薬だけでなく、分子標的薬、抗体薬、免疫チェックポイント阻害薬などの治療薬だけではなく、支持療法も進歩し、入院治療より外来治療で、がん治療をしながら生活を送ることが主流になってきました。新たな薬剤が増えたことで、治療の選択をしなければならない場面も増え、患者さんそれぞれが抱える問題も副作用や整容、就労、治療費など多岐にわたるようになってい
ます。看護師は、このような個別性の高い患者さんと向き合い、ともに考えることが大切だと考えています。今は、看護管理者となり、直接的に患者さんとかかわることが少なくなりましたが、同じような思いをもっている後輩たちとともに、患者さんに寄り添っていきたいと思っています。




本記事は『YORi-SOU がんナーシング』2022年4号からの再掲載です。


YORi-SOU がんナーシング2023年5号

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