鈴木澄子
NPO法人ミーネット ピアサポーター

2007年、がん検診で乳がんが見つかる。術前抗がん薬治療、手術、分子標的薬治療、ホルモン療法を経て、治癒。2014年からピアサポート活動。

▼NPO法人ミーネットとは
がん体験者やその家族を対象に、身近な相談役として「ピアサポーター」を養成。市民・行政・医療機関の連携のもと、愛知県の地域に根ざしたピアサポートを行う。





「ずっと手を握っていたんですよ」

「まさか」の乳がんの告知でした。

当時、二人の子どもはまだ小学生。私は出産以外、入院したこともありません。身体も心も凍りつくなかで、「なぜ!? どうして!?」をくり返すばかりでした。

それでも何とか覚悟を決めて入院したその日、看護師と看護実習生が病室に来てくれました。実習生は私の入院生活をサポートしてくれるということでした。緊張からなのか、看護師の背に半分隠れるように立っていましたが、看護師に押し出されるようにして私のベッドサイドに進み、「Aです。よろしくお願いします」と挨拶をしてくれました。

手術当日、私はAさんの押す車椅子で手術室に入り、麻酔のマスクを装着後は瞬時に意識が遠のいて、気付いたら病室でした。

翌日、ベッドサイドにやって来たAさんが、問診のようなやり取りのなかで私にこう言いました。「私、手術のときに、ずっと鈴木さんの手を握っていたんですよ」。

思わず自分の手を見ました。まるでもう一人の自分がどこかで見ていたように、Aさんが手術台の横で、私の手を握って寄り添ってくれている光景がありありと浮かんできて胸が熱くなりました。私からみればまだ幼く、どこか頼りない実習生。そう思っていた自分を恥じました。それからは、まるで私が幼い子どものように、Aさんに自分の話を聴いてもらうばかりでした。

退院の日、ベテラン看護師に伴われてAさんがお別れに来てくれました。向かい合っただけでAさんも私も涙ぐんでしまいました。短い期間ではあったけれど、別れが切なく思えました。ずっと寄り添ってくれたAさんの存在が、私の入院生活の不安を軽くしてくれていたのです。

私はその後、がんのピアサポート活動を始め、7年が経ちました。相談者との対話を振り返り「寄り添いとは何か」を考えるたび、Aさんのことを思い出しています。




本記事は『YORi-SOU がんナーシング』2022年3号からの再掲載です。


YORi-SOU がんナーシング2023年5号

YORi-SOU がんナーシング2023年5号
【第1特集】
ケアを見直して自信につなげる!
キーワードは血管外漏出・G-CSF製剤・免疫チェックポイント阻害薬
最新ガイドライン
知識アップ&まなび直しレクチャー


■はじめに ガイドライン多過ぎ問題!? がん看護の知識アップ法レクチャー
担当する患者の疾患や治療からガイドラインを活用してみましょう
■Part1 知識アップ&まなび直しでケアをアップデート!
血管外漏出の予防・管理・対策
■Part2 知識アップ&まなび直しですっきりわかる!
FN予防のG-CSF製剤の使いかた
■Part3 免疫療法の最新ガイドライン
さくっと解説&未来予測

【第2特集】
みんなでふりかえるとヒントがいっぱい!
教えて先輩! ACPって何ですか?


■Part1 正しく理解して説明できる? ACPのキソ知識
■Part2 ヒントをみつけよう! 先輩ナースたちの体験記

▼詳しくはこちらから




つなキャン

看護専門誌「YORi-SOUがんナーシング」の公式メールマガジン
「つなキャン」

毎月2回 第1・第3月曜日配信

がん(キャンサー)患者さんにかかわる人すべてをつなぐ輪(サークル)をめざし、がん領域の情報、ケアの奥深さ・楽しさ・お役立ち情報をお伝えします。

【登録方法】
こちらから「ログイン」
②ページ上部にある「ログイン中(登録・注文情報)」を選択
③会員名の横にある「マイページはこちら」を選択
③「メルマガ購読・解除」を選択して『つなキャン』の「購読する」ボタンを押して登録完了
※メディカIDをお持ちでない方は新規会員登録が必要です。

YORi-SOU がんナーシングの公式「X」もよければフォローください