認定がん専門相談員/緩和ケア認定看護師/リンパ浮腫セラピスト
緩和ケア認定看護師として培った経験を生かし、がんに伴うさまざまな苦悩を抱える患者や家族を支援する。
看護のモットーは“気持ちの揺れに寄り添い、心を傾け傾聴する”
「わたし……、自分の人生を選択してもよいのでしょうか」
Aさんは診察を控え、一人、待合でうつむき座っていた。その様子が気になり声をかけると、思いつめた様子で面談を希望された。
Aさんは40歳代で切除不能の膵臓がんの告知を受け、がん薬物療法を受けていた。治療日はいつも一人で来院し、夫へ負担がかからないようにと気遣うような方だった。
相談室の扉を閉め、思いを傾聴した。Aさんは「わたし……、自分の人生を選択してもよいのでしょうか。私に残された時間。このままではつらすぎて」と涙をこぼした。
医師から根治不能と告げられていたAさんにとって、がん薬物療法の副作用は耐え難いものだったが、「医師や家族の期待に応え治療を続けなければならない」という思いから、自身の選択や弱音は言葉にできず、心に蓋をして過ごしていた。病状の進行や副作用に伴い臥床時間が増え、家事や仕事ができないという役割の喪失感や自責の念、自己存在価値の低下によりAさんは“生きる目標”を失いかけていた。
そこで、実現の可能性にかかわらず希望を抱き続けてよいことを伝え、Aさんが希望する人生の在りかたについて尋ねた。すると、Aさんは目の輝きを取り戻し、残された人生への想いを語った。
その後診察室で、Aさんは自身の想いを言葉にして医師へ伝えることができた。その日は休薬し、休息の時間をとることを自身で選択した。
医療者にとっての最善が、常に患者にとっての最善であるとは限らない。Aさんの言葉と涙から、医療者の“真の寄り添いのありかた”を見つめ直した。がんの臨床において、がんと共に生きる患者と家族が、その人らしい人生を全うできるよう、言葉の奥に隠された真の想いに寄り添う伴走者として支援を続けたい。
本記事は『YORi-SOU がんナーシング』2023年3号からの再掲載です。
【特集】
ナースのためのストレスマネジメント対策も伝授!
告知→終末期まで精神的な悩みに答える
これが知りたかった!こころの緩和ケア
Part 1 はじめよう!こころをみる緩和ケア
がん患者とこころのケア
Part 2 エキスパートの極意を伝授!悩める事例13①
診断期のこころの緩和ケア
悩み1 健康診断を発端にがんが発覚。告知の際に同席することに……。事前にすることはある?面談時は何をすればよい?
悩み2 がんの再発が発覚し、検査入院中の患者。本人への接しかたで気を付けることって?
悩み3 がんの再発が発覚し、検査入院中の患者。今の段階から家族とどうやってコミュニケーションをとったらよい?
悩み4 10~20歳代(学生含む)の患者に対しての治療の意思決定支援。どうすすめたらよい?
悩み5 30~40歳代(就労・子育て)の患者に対しての治療の意思決定支援。どうすすめたらよい?
悩み6 認知症の高齢がん患者に対しての治療の意思決定支援。どうすすめたらよい?
悩み7 発達障害が疑われる患者への意思決定支援。どうすすめたらよい?
Part 2 エキスパートの極意を伝授!悩める事例13②
治療期のこころの緩和ケア
悩み8 不安・抑うつがみられる患者への症状マネジメント。どうしたらよい?
悩み9 不眠がみられる患者への症状マネジメント。どうしたらよい?
悩み10 せん妄がみられる患者への症状マネジメント。どうしたらよい?
Part 2 エキスパートの極意を伝授!悩める事例13③
終末期のこころの緩和ケア
悩み11 高齢がん患者(独居、家族なし)に対しての治療中止時の意思決定支援。どうすすめたらよい?
悩み12 患者に向き合うには経験が少ないと感じる。どうすすめたらよいか分からない。
悩み13 鎮静導入のタイミングが難しい……。どう考えたらよい?
Part 3 ナースのためのストレスマネジメント対策①
若者世代・管理職 世代別コミュニケーション作法
Part 4 ナースのためのストレスマネジメント対策②
がん看護に生かせるネガティブ・ケイパビリティのすすめ
▼詳しくはこちらから
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