1961年愛媛県生まれ。2014年、肺がんが見つかり、手術。患者としての経験が誰かの役に立つかも知れないとピアサポーター、がん教育に携わる。2024年、肺がん再発。強皮症など基礎疾患があるなか、現在治療中。
▼NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会とは?
2008年に誕生した、主に愛媛県内のがん患者と家族、遺族などが集う会。毎月の例会の他、松山市内中心部で常設の語り合いの場「町なかサロン」を運営している。
「遠慮しなくていいですよ」
2014年、退院が近くなったある日、私はベッドに横たわっていました。そこへ、一人の看護師さんが来られ「ベッドマットが柔らかすぎるから交換します」と、硬いマットに交換して行かれました。そのマットに横たわってみると、私の身体を押し返すような硬さ。術後、痩せてしまった身体にはしんどい硬さです。「交換しないほうが寝心地はよかったなぁ」「このままでいいです、という選択肢はなかったのかなぁ」「あのマットは誰かが
使うのかなぁ」と、横になりながらマットを撫で思いを巡らせていました。
すると、しばらくして、別の二人の看護師さんが来られ、笑顔と張りのある声で「寝心地はどうですか? しんどくないですか?」「硬くないですか?」と、様子を見に来てくださったのです。
私は咄嗟に「大丈夫です」と答えました。しかし、心のなかでは「そうそう、硬いんです。でも、あと二日もすれば退院。忙しい看護師さんたちに、また交換の手間をかけさせる訳にはいかない」と、口に出せずにいました。すると、「遠慮しなくていいですよ!」と言ってくださるのです。返事ができずに二人の笑顔を見ていました。私の沈黙に確信を得たように「硬いですね、交換しましょうね」と、さっさと寝心地のよいものにしてくださったのです。言えない気持ちを読み取ってくださったのです。寝ている時間が長いので、あと二日とはいえ本当にありがたかったです。
看護師さんにあえて言ってもらえた「遠慮しなくていいですよ」は、弱っている心と身体にとても心強い言葉でした。それは、飲み込んだ思いを汲み取ってもらえたからだと思います。あのときのひと言の響きを、今も大切にしています。
本記事は『YORi-SOU がんナーシング』2024年5号からの再掲載です。
【特集】
エビデンスで考えるがん患者さんの終末期ケア
かかわりかたと症状マネジメント
■Part1 終末期ケアとおさえるべきポイント
●01 すべての医療はBSC(Best Supportive Care)なのでは?
■Part2 終末期の場面ごとの患者さん・家族とのかかわりかた
●02 エビデンスから実践に落とし込む がんの診断・告知
●03 エビデンスから実践に落とし込む がんの再発・進行
●04 エビデンスから実践に落とし込む 積極的治療の中止
●05 エビデンスから実践に落とし込む がん患者の最期の場の選択と患者さん・家族とのかかわり
●06 エビデンスから実践に落とし込む 鎮静
●07 エビデンスから実践に落とし込む 看取り
●08 エビデンスから実践に落とし込む グリーフケア
■Part3 終末期における症状マネジメント
●09 全身症状 がん終末期の「痛み」
●10 呼吸器症状 がん終末期の「呼吸困難」
●11 呼吸器症状 がん終末期の「咳嗽」
●12 消化器症状 がん終末期の「食欲不振」
●13 消化器症状 がん終末期の「悪心・嘔吐」
●14 消化器症状 がん終末期の「腹部膨満感」
●15 消化器症状 がん終末期の「便秘・下痢」
●16 精神症状 がん終末期の「せん妄」
●17 精神症状 がん終末期の「不安・抑うつ」
●18 精神症状 がん終末期の「不眠」
●19 皮膚症状 がん終末期の「褥瘡」
●20 全身症状 がん終末期の「倦怠感(がん関連倦怠感)」
■Part4 患者指導にそのまま渡せる! 動画つきDLシート集
●21 痛み
●22 呼吸困難感
●23 倦怠感
▼詳しくはこちらから
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