さて、前回に引き続き今回も心房細動のお話です。
心房細動のさまざまな要因の中でも臨床で役立つ、知っていて損はない要因を語っておきます。
弁膜症 (おもに僧帽弁)
僧帽弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄は、弁の逆流や狭窄により左心房が大きくなります。
左心房が大きくなると左心房の筋肉に負担がかかり、心房細動を発症することもあります。
しかも、僧帽弁に異常がある患者さんを見たら「もしかしたら心房細動になるかも知れないな」という頭でいれば、心電図に注意することができます。
心房細動になったら先輩や医師へ報告しましょう。
P on T
ところで、R on Tって聞いたことあります?
T波の上にQRSが重なって心室頻拍(ventricular tachycardia;VT)、心室細動(ventricular fibrillation;Vf)をひき起こすあれです。超怖い。
ちなみにT波に重なるのはR波だけじゃないんです。
じつはP波も重なることがあります。
P on Tと呼びます。これが起こるとどうなるか。
P on Tがきっかけで心房細動になることもあります。
心電図では読み方がありますので、その読み方を説明します。
難しくないので大丈夫、一緒にみていきましょう。
ポイントは、T波の形が他と違うんです。間違い探しをしてみましょう。T波だけ見てください(下図)。
はいどうでしょうか。
1拍目と2拍目のT波と比べて3拍目のT波の形が違うのがわかると思います。
3拍目のT波が違い、それ以降は心房細動に移行しているのがおかわりになると思います(下図)。
これがP on Tからの心房細動です。
いいですか。こういうこともあると頭の隅っこに置いておいていただければ結構です。知識の隅っこ暮らしです。
循環血漿量減少でも心房細動になる
もちろん、心房に負担がかかるのは弁の異常だけではなく、極度の脱水でも起こることがありますし、興奮している状態でも起こることがあります。
あとは透析後も起こる可能性があります。
体液量が多かったのが透析により少なくなることで交感神経が興奮するなどいろいろな原因が考えられています。
そして、透析後の心房細動は気づかないことも多く、自覚症状も乏しいため見逃しやすいので注意して観察していきましょう。
SR復帰するときにポーズがないか要チェックや
これもポイントとして語っておきます。
心房細動が洞調律(sinus rhythm;SR)に戻ることがあります。
このときに、一時的な心停止が起きることがあります。ほらこれ見て(下図)。
心房細動から洞調律に戻ったときの波形なんですけど、いちばん上の波形は心房細動で下から2番目は洞調律になってるじゃないですか。
で、注目すべきは3番目の波形です。
めちゃくちゃ徐脈でしょ? とくに上から3番目なんて6~7秒もpause(心室停止)しちゃってるんですよ。
ここまで徐脈だと失神していてもおかしくないので、症状がないかどうかをしっかり観察して聞き出すことが重要です。
失神とか怖くないですか?心房細動から洞調律に戻ったときの波形もチェックしておきましょう。
どうですか心房細動は。
奥が深いでしょ?今日はいっぱい語ったのでここまでにしときます。
・僧帽弁に異常がある患者さんを見たら「もしかしたら心房細動になるかも知れないな」ということを念頭に置く。
・P on Tからの心房細動があることを知識として知っておく。
・透析後の心房細動は気付かないことも多く、自覚症状も乏しいため、注意して観察する。
・心房細動から洞調律に戻ったときの波形もチェック。
血圧を測りに行ったのに血圧計を忘れるとんこつ...いやポンコツナース。『わからないことを馬鹿にするのは間違ってる精神』で密かに若手ナースを応援している。
「僕なんかできない…」より「僕でもやってみよう…」と考えたい超マブなお年頃。心電図を通してあなたが自信が持てたり、何かに挑戦するスピリッツを持ってもらえるように頑張るんば←黙っ
この心電図の勉強も挑戦でしょう。とにかくなんでもいいから挑戦するあなたの背中押します。ドンっ!!!