農林大学校に退学届の提出や寮の荷物整理に向かう電車の中でこれまでの学校生活を思い起こしています。私がダンスを10年ほど習っていた話から友だちに求められてダンス練習を行うことに。ほかにも興味ある人を探して声をかけ、LINEグループを作り、日程調整をして場所もおさえました。そして練習当日、想像していたよりもみんな本気ではなく、それがどんどんフラストレーションとなっていきました。個人なら自分をコントロールできるけど、他者を巻き込むとそうもいかず、自分が立てた予測どおりにいかなくて、それがストレスとなるので、これまでみずからこうした活動を避けてきたのでした………
ダンス練習は自然消滅…
農林大学校内で友だちからのリクエストに応えてダンス練習を行って以降2回ほどやりましたが、毎回グダつく展開に。グダグダになってしまうその場にフラストレーションを感じながらやるほど私はパワーのある人間ではありません。
ダンスをやりたい人の何かのきっかけにでもなればいいかなと思って始めたことなので、そこまでおもしろさを感じてもらえないなら、私も部屋でダラダラして友だちと話していたほうがいいなと思うようになりました。
なので、活動は自然消滅していきました。
ダンスを始めたきっかけ
私がダンスを始めたのは小学2年生の冬。家から歩いていける距離にあるカルチャースクールにダンス教室があると友だちのお母さんに誘われて遊びの延長で始めました。いまほどダンスの習いごとはポピュラーではなく、周りでやっている友だちはいませんでした。
当時は公園で遊ぶだけじゃ飽きるから、週に1回違う遊びもあっていいよね!という認識だったので、うまくなりたいという感覚より、先生の動きを見て真似するの楽しい!という感覚が強かったです。
通っているうちに新しく入ってくる子がいると刺激になり、「負けたくない!」「もっとうまくなりたい!」と思うようになり、小6のときに少し遠いavexダンスマスターが導入されてるスクールに通うことにしました。
そこは3カ月か半年ごとにテストがあり、レベル分けをしていて、親も同世代でやっている子もガチでした。レッスンの部屋の外で多くのお母さん方が見ていて、休憩のたびお母さんにアドバイスを求めている子もいました。
中学生になると同じクラスにキッズダンサーでテレビ出ていた人や、EXILEのツアー同行経験者もいて、うまくなった先が見えるようになりました。うまくなったら、この人たちのように踊れるようになったら、私が見ていた世界に行ける。そう思えるようになりました。
当時は本気でチビザイルになりたかったです。ここでがんばっていれば、いつか誰かが声をかけてくれるんじゃないかという期待を胸にレッスンを受けていました(avex東京校やEXPGに入る選択肢は中学生の私の頭にはありませんでした。いまとなってはどこでがんばれば最短で機会を掴めるかわかりますが、スマホを持っていなかった当時はわかりませんでした。もしそうした情報を得られていたら、また違った未来だったのかも知れません)。
高校看護科受験は未知へのチャレンジ
思うように身体が動かなくて、踊りながら涙が溢れてくることもありましたし、どうしたらテレビで見ている世界に行けるか、中学生の調べられる範囲で調べるようになりました。
しかし、看護科のある高校に進学するのが第一優先だったため、オーディションの情報が流れてきても何一つ応募することができませんでした。すごく悔しかったです。
がんばってうまくなっているのにその先を見られない。本気でやっているのに、看護師になるために機会を手放さないといけない。機会があることさえ見ないようにしないといけない。
私はダンスと勉強を両立できるほど器用ではなかったですし、「看護科合格」はそれだけに集中して努力しても、受かるかわからない、手が届くかわからない場所でした。まともに学校に通えない「フトウコー」と言われていた私のような中学生が目指せる場所ではありませんでした。県の全域から受験者が集まり、1学年たった40人しか受からない倍率の高い高校看護科目指すのって本当に遠い場所だったんです。
それに、近くの高校とは違ってとにかく情報がない。どんな生徒が求められているのか、どんなカリキュラムなのか、どんな先生がいるのか、どんな生徒が通ってるのか、とにかく情報がありませんでした。中学校の先生も塾の先生も看護科の実態を知らない。本当に未知に対する挑戦でした。
努力の方向性が合っているのどうかすらわからず、つねに不安でした。だからこそいろんなやりたいことを諦めて、自分が思う全力で受験にかけたかったのです。
私は小心者です。だからすべてを捧げてきたという自負がないと挑戦できない。当時の私にとってはとても遠い目標だったのです。
抑圧されたダンスへの想いはぼんやりとした劣等感、消化不良として、その後の人生に存在し続けることになります。
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。