コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、それまで通っていた農林大学校を退学することを決意したまめこさん。寮の荷物整理に向かっています。そのことを友人たちに伝えたところ、ご飯を食べに行くことになり、学校最寄りのバス停まで迎えに来てくれることになっていました。すべてが楽しくて、すべてが面白くて、常に笑って過ごし、自分を認めてもらえたと感じていた農林大学校での日々。友人たちとは3カ月ぶりの再会です。
変わらない「ゆるさ」
「バス着いたんだけど、どこにいる?」とLINEしました。
すぐに「目の前のコンビニの駐車場に停めてるよ」と返ってきました。
横断歩道を渡って、コンビニの駐車場を見渡します。
ほとんど車が停まっていなかったのですぐにわかりました。
車の助手席の窓から覗き込み手を振ると、笑顔が返ってきました。
「久しぶりー!!」
「久しぶりー! ごめんね〜迎えにきてもらっちゃって!」
「おじょーに早く会えるからいいんさ!」
迎えに来てくれたのは第29回から登場しているCちゃんです。さっそく愛が強くて笑ってしまいました(笑)。
「3カ月ぶりだよ! やばいね(笑)」
「やばい(笑)」
看護師として働き始めて、自分が何か変わっていたら嫌だなと思っていたので、3カ月たっていても前と同じノリで話せることにホッとしました。私はいい意味で変わっていなかったようです。
「2人はもう学校に着いてるの??」
「2人から連絡はないけど、着いてるんじゃない?」
ゆるい(笑)。
「報告!連絡!相談!を怠るな!」と看護学生のときにしごかれてきているので、この「ゆるさ」がやりなんだか不思議です(笑)。小さいことは気にしない、ふんわりと日常が動いていく、農林大学校のこの感じがすごく好きでした。
「みんな元気にしてる?」
「みんな元気よ〜。寮じゃなくなったから他のコースの人とは会う機会が減ったけど、昼ごはんのときには会うからね〜」
私ももしここで2年目を過ごしていたらどんな生活だったのだろうと胸がキュっとなりました。もしかしたら、みんなが実家通いになって、寮で暮らすのがさみしくて楽しくなくなっていたかもしれないし、また違う楽しみを見つけていたかもしれません。
いくら想像しても、そこには私はいないんですよね。さみしいけど、私は別の道を進み始めたのですから。
「あーーー(笑)」
「ごめん、ごめん、窓閉めるの忘れてた(笑)」
バス停から学校に向かう途中に畜舎があります。このにおいもたぶん、もう嗅ぐことはないだろうなと思いました。
安心して笑える関係性
駐車場に着くと、すでに2人は車の外に出て談笑していました。
「うぃぃ〜〜、おじょー久しぶりじゃん! ふぅ〜⤴︎」
「元気してた?(笑)」
そうそうこの感じ。
なんでもない日常が笑いで彩られる。
「元気だよ〜、昨日腰のMRI撮ったけど(笑)」
「どうしたん!?」
「造園のインターンと病院の仕事で腰痛めて、失禁はするし、足痺れるしで最悪(笑)」
「今日……?」
「もらしてないよ!(笑)漏らしたとしても、静かに漏らすから大丈夫。みんな気づかない、気づかない(笑)」
やだ〜と笑い合う。
ご飯もお風呂も共にした関係性は強いなと思う。起きたての目が開ききっていない髪の毛がボサボサな姿、ご飯を食べるのがゆっくり過ぎて、食べるのに飽きている姿、寝る前のTシャツをズボンにインした姿も全部見られています。
楽しい日も、疲れている日も、まずまずな日も、私の1日のすべてを知っている。
「ご飯どこに行くの?」
「ハンバーグがおいしいお店があって、ちょっと時間かかるけどいいよね?」
「明日中に荷物片付けて帰ればいいから大丈夫」
「おけ。そしたら行こっか!」
ドライブ時間が長いほうがみんなと話せるので、ありがたいロケーションでした。
「どの車で行くの?」
「私、お店から直帰したいから車出すよ」
「おけ。そしたら私、車出すよ」
いつも以上にスムーズに決まりました。ここで時間を使いたくないと思ってくれているのかなと思いました。
2人ずつに分かれて乗っていくのが妥当だよな〜と思っていたら、その場の雰囲気で、直帰したい子1人とそれ以外の3人で分かれることになりました。仲が良いからできるイジりでしたが、久しぶりの私は大丈夫なのかと心配になりました(笑)。
ハンバーグを食べに、出発です!
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。