コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、それまで通っていた農林大学校を退学することを決意したまめこさん。寮の荷物整理に向かう途中で友だちが迎えに来てくれて食事へ。久しぶりに楽しい時間を過ごしながら、この友人たちに出会ったことで、心の底から笑うことができ、自分の心や身体、頭が柔軟になり、いままでは楽しめなかったことも楽しめるようになったことで、看護師になることもポジティブにとらえるようになったことのだと、農林大学校で過ごした時間のことを考えています。
それぞれの道へ
私「インターンどうだった？」
友だち「まぁたいへんだったけど、楽しかったかなー」
私「そこに就職するの？」
友だち「うーん。多分しない。都会で就職したいんだよね」
私「そうなの？ それじゃあ、いままでここで勉強してきたこととは違う業種？」
友だち「そうなると思う」
私「え、2人はどうする予定なの？」
友だち「私は変わらず、公務員志望〜」
友だち「私はわかんないけど、いまと直結しないかなー。命に向き合うの結構しんどいからさ（彼女は畜産コース）」
いま、みんないっしょにいるけど、それぞれの方向を見ていました。私は一足早かったけれど、それぞれ違う歯車が回り始めている音がします。名残惜しいけど、このタイミングがベストだったんだと思いました。
楽しい時間がフェードアウトしていくのではなく、最高潮で終止符が打ててよかった。時折り心の奥の宝物箱できらめけばいい。
時間が経てば、いろんな楽しかった思い出を詳細には思い出せなくなります。でも、手を胸に当てれば、その温度でわかるんだと思います。私には素敵な時間があったんだと。
楽しい時間はあっという間に
「そろそろ行こっか！」
「そうだね〜」
「ごちろうさまでした〜！！」
すっかり辺りは暗くなっていました。
友だち「じゃあ、私は直帰するから。おじょーまた遊びに来てくれよ！」
私「もちろん！また来る！」
ライダーのようなポーズを決めて、「シュー！」と声で音を出しながら運転席に入っていきました。
ずっと面白い（笑）。
私たち3人も車に乗り込みます。
「うっしゃー！学校戻るかー！！」
「お願いしま〜す」
懐かしくて、楽しくて、楽しかったことも楽しんだことも忘れたくなくて、帰りの車の中、私は動画を撮っていました。
仕事がうまくいかないとき、きっとこの楽しい思い出に支えられるんだろうな。
またね、みんな。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気づいたら学校に着いていました。
私「なんか、行きよりも帰りのほうが速く感じるね〜」
友だち「ね〜。これでおじょーとバイバイか〜」
私「寂しいよな〜（笑）。でもまたこっちに遊びにくるから！またそのときに！」
友だち「絶対連絡してね！！」
私「するする！」
2人がそれぞれの車に乗って学校を出発するのを見送りました。小さくなっていく車を見ていると、私だけが取り残されたような気がしました。実際は、私が先に決めて別の道を進んでいくのに。
この選択があってるかなんてわからないけど、でも私はちゃんと挑戦したいと思えたから。それだけでも大きな収穫です。
久しぶりの寮
久しぶりの寮は、ぽつりぽつりと電気がついていました。
つるっとした床に電灯が反射して、奥に見える扉の向こうは真っ暗。今日は私以外誰もいないのだろう。
がらんとした寮の靴箱は、狭い中で誰かに気を遣って靴を取る必要もない。汗臭さもない。ただ砂のジャリっとした感覚は変わりませんでした。
きっと誰かが外靴のまま中に入ったんだろう。
今日の舎監さんは誰だろうな。
急に最後になっちゃったな。
3人舎監さんがいましたが、今日挨拶できるのはそのうちの1人です。もっと余裕を持って退学できたら事前に挨拶できたのに。無理もないか、コロナのせいだから。急遽じゃなかったら、退学してないもんな。
平日は寮に住んでいる同級生も、土日祝日となると実家に帰ります。私は実家まで遠かったので、ほぼずっといました。なので、他の同級生よりも断然舎監さんと顔合わせる回数が多かったのです。
去年は年末も帰らない私に、舎監さんは、少しは帰ってあげなよと心配していました。ゴールデンウィークもお盆も、実家に帰ってはすぐに寮に帰ってくる私を見て少々驚いていたように思います。
でも、私はそれぐらいここが居心地良かった。
実家よりも寮のほうが熟睡できたのです。
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。
