新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさん。コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、それまで通っていた農林大学校を退学することを決意。2カ月ぶりに学校を訪れて寮の荷物整理をし、一泊して翌朝に友人や先生たちに見送られ、悪天候のなか、苦手な高速道路を走り抜けてようやく実家に到着しました。そこには中学以来ほとんど話していない父が傘をさして待っていました……

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とっさのリアクションがとれない

寮から実家まで4時間ほどの移動がようやく終わりました。家に着いてからは母とリビングで紅茶を飲み、お菓子を食べながら、車のバッテリーが上がったうえにセキュリティアラームが止まらなくなったこと、車の鍵の電池交換を先生がしてくれたこと、クラスメイトが出発当日に集まってくれたことなど、この数日間の話をしました。

私「初めて送別品もらっちゃったよ。学校は辞めるんだけど、私的には別れって感じじゃなかったから想定してなかった(笑)」

母「みんな優しいのね〜」

私「全然想定してなかったから、ちゃんとリアクションできてたか心配なんだよね(笑)」

母「リアクション薄いもんね〜。でも、1年一緒に過ごしてきたわけだし、大丈夫なんじゃない? 全体的に反応薄いの知ってくれてるわけでしょ?」

私は定型発達の人に比べて、非常にリアクションが薄いです。どんなにうれしくても、どんなに悲しくても、どんなに緊張してても、ほとんど表情に出ないです。だからうれしいと思った感情を意識的に表面に出そうとしないとほぼノーリアクションになってしまうのです。

以前、友だちに誕生日を祝ってもらったときに撮ってもらっていた動画を観たのですが、自分のなかではがんばってリアクションしているはずが、驚くほどリアクションがありませんでした。

驚いてフリーズしている感じで、もともと声に抑揚がないのも相まって棒読みの「ありがとうー」が映っていました。自分がサプライズをする側だったら、具合悪い? 怒ってる? 大丈夫かなと心配になるほどです。

それ以来、何かをもらったときやサプライズをされたときの反応が上手な人を見つけては、その人の声のトーンや表情、リアクションを家で真似してみて、鏡で確認するなどの努力をしていたんですが、とっさには出せないんですよね。

こういうことが起きたらこういう顔をして、この声のトーンで、こういうリアクションをしようとシミュレーションを事前に用意して、やっと定型発達の人の半分くらいのリアクションができる感じです。本当に困ったものです。

サプライズや想定外のうれしいことがあるたびに、うれしさよりも「私のリアクション大丈夫だったかな」という心配が後で膨らんできます。私のことを想ってくれている人たちを失望させていないかと。

降ろした荷物の多さに途方にくれる

出発のときに適切な振る舞いができていたかを心配しつつ、荷解きをしなければなりません。明日からはまた仕事なので、今日中に車から荷物は全部降ろして、ある程度は片付けておきたいのです。

駐車場から車を出し、家の前に横づけして、母と私で荷物をどんどん家の中に運んでいきます。日用品を詰め込んだ袋は持ち運ぶときに中で物同士がぶつかり合い破れそうになりましたが、幸い玄関先まではどうにかなりました。どの袋も荷物をいっぱいに入れてきたため、運ぶとなると引きちぎれそうでした。狭い玄関は早々に荷物でいっぱいになりましたが、それでもとりあえずは積み上げていきます。

母「ゴミ袋にいろいろ詰めてきたの? ウケる〜」

私「見栄えは悪いけど、ダンボールに詰めるより場所とらないからいいアイデアでしょ?」

玄関いっぱいの荷物を見て、これから分別して収納しないといけないと思うと途方にくれました。

私「これ整理しないといけないの?? まじ無理すぎるー!!(泣)」

母「まあ時間はあるんだから、ゆっくりやりなさい〜」

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。