新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していますが、今朝は出勤してすぐナースステーションでの申し送りに参加し、これまでになかった入浴前の患者さんの準備からは入ることになり、はじめて摘便も行いました……

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安心材料を作る

特浴担当者は朝9時半から11時半のあいだに15名ほどの患者さんの体を洗います。

どれぐらいのペースでやったらいいのか、まだまだつかめません。すべてを丁寧にやったら絶対に間に合わないからです。でも「ほどよく」とか「いい感じで」とかそういう抽象的な指示は、ASDの私にとってはよくわかりません。言葉の理解を安心材料にしたいのにできないと、本当にこれでいいのかと不安でしかないのです。ですが、師長さんといっしょにやることで、「いい感じで」というのは具体的にこれぐらいなのだと体感してわかります。

本当は足の裏の角質とかも落としたいからもっと擦りたいけど、時間的には難しいわけで、もっときれいにできるのになと思っても終わらせる必要があります。あとで「もっときれいにできたでしょ!」と他の看護師から言われるのは怖いですが、そのときは「師長さんといっしょに入りました」と言おうと安心材料を作っておきます。

理想と現場で求められる質は違います。そのことを私はちゃんと腑に落とさないといけません。変に完璧主義になっていたら仕事に支障が出ます。これでいい、これがいいのだと脳に刷り込みます。

師長「もうさ、だいぶ慣れたでしょ? 私はシーツ交換やってるから、何か困ったら呼んで!」

私の手技や観察に対して信頼ができたのか、師長さんはたったかと助手さんがやっているシーツ交換に混ざりにいきました。

特浴室はベッド1台入れても濡れない距離を作れるほど広いため、特浴室の端っこでシーツ交換をしています。患者さんと私から距離はできますが、師長さんの視界の中に私がいるので不安が増すことはありませんでした。

押し寄せる不安

特浴係は身体を洗いながら皮膚状態などの適切な観察を行い、安全かつスピーディーに行う必要があります。

洗い残しはないか、皮膚状態や褥瘡はちゃんと見られているか、あと残り何人いるのだろうか、できるだけスピーディーにやっているがこのスピードが適切なのだろうか。いろんなことを考えながら、看護助手さんの独り言や助手さん同士の会話にも耳を傾けます。

助手「(このペースで終わるかな…)」
助手「(食介に何人残れるんだっけ? 誰、先に休憩入る?)」

師長「あと何人ー?」

特浴室のドアをガラリと開けて、廊下にいる助手さんに聞いています。

助手「いま並んでいるのが3人で、出してない患者さん含めると7人か8人だと思います!」
師長「ありがとう〜!」

まだ7、8人いるのか……。
たぶん終わらないよな……。

師長「まめこさん〜、ペース上げて〜、終わんないよ〜」

だよな(泣)。


せかせかと動いて汗だくになりながら、15人分の特浴が終わりました。時計の針は、12時を指しています。終わったものの、これは無事に終わったとは言、え、な、い……?

師長さんと2人で身体を洗うと時間内に終わるものの、1人になるとこんなにも時間がかかってしまうのかと自分のできなさに申し訳ない気持ちになりました。

助手「(もうご飯来ちゃってるじゃない)」
助手「(誰かそっちいける? 特浴室の掃除はやっておくから、食事配って介助やっちゃってて)」

自分の遅れが、助手さんたちの業務をひっ迫させています。でもどうやったら11時半までに終わらせるのだろうか。私以外の看護師は11時半までに終わらせられているのだろうか。

師長「まめこさん〜、着替えたら食事介助までしていっちゃって〜! 12時半になったら終わってなくても下降りてタイムカード押して帰っちゃって大丈夫だからね! よろしくね〜」
私「あ、わかりました。」


私「あ、あの、師長さんに食事介助していってと言われたんですけど、どなたのところに入ればいいですか?」
助手「ロビーで食べる人のお願いしようかな〜。ほとんど自分で食べられるんだけど止まっちゃうから、必要時に促してあげて」
私「わかりました」

近くの椅子を持ってその方の隣に座ります。ご自身のペースで食べられていたので、とりあえず見守ります。

やることないけど、これでいいんだよね?

座って見守るという、側から見たら何もしているように見えないだろうなと思うと、なんだかむずがゆいいです。

ナースステーションから見える位置だし、何もしないで、ただ座っているだけじゃんとか思われないかな。大丈夫かな。

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まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。