新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつありました……
褥瘡の処置に入って蘇る学生時代の記憶
いつの間にか、勤務に来たらタイムカードを配属フロアで押して、すぐに上のフロアに行き、朝の申し送りから食事介助まで行うことがほとんどになりました。
看護助手「最近ずっと上ばかりだね〜、せっかく入ってくれたのにさみしいよ」
私「なんで私が上のフロアに行っているのかわからないんですけど、人手不足とかなんですかね?」
不思議な勤務形態だなと思いつつ、上のフロアの特浴室は広くて私への指導もしやすいからかなと自己解決していました。
朝の申し送りが少し早く終わると、すぐに特浴の準備をするには時間が早いため、フリー業務担当の看護師さんといっしょに処置に行くことになりました。
フリー業務担当看護師「失礼します〜、褥瘡の処置に来ました」
患者さん「…」
このフロアにいる患者さんの多くは話すことができず、自ら動くこともほとんどできない方です。そのため褥瘡ができやすい仙骨の処置は看護師2人でやるか、助手さんを1人呼んでくる必要があります。ただ助手さんは朝のおむつ交換で忙しいため、他に何もやることがない私が側臥位を支える係として呼ばれていたのだと思います。
患者さんのどこに褥瘡があるのか、何カ所あるのか、処置に何を使うのかもわからない私は看護師さんに指示される通りに体の向きを変えて、処置がしやすいようにサポートする役割に徹しました。
正直、褥瘡を見るのに抵抗がありました。看護学生時代、褥瘡の模型を直視することもできませんでした。私はグロテスクなものが苦手で、自分の血液を見ても気持ち悪くなってしまうタイプです。
フリー業務担当看護師「はい、いいよ〜、仰臥位にして」「あ、ねえ、足水虫じゃない? 写真撮るからちょっと待ってて。iPad持ってくるから」
私は患者さんの足を見て、どこら辺が水虫なのか分かりませんでした。看護実習のときに先生から「あの患者さん爪白癬だったね」と言われて、どこをどう見て爪白癬だとわかったのかわからなかった記憶が蘇ります。
皮膚疾患への理解が弱いと感じ
家に帰って看護学生時代の皮膚科の授業プリントを探しましたが、見つかったプリントはたったの1枚。この裏表印刷の1枚のプリントのなかからテストに出すから勉強しといてと言われたのを思い出しました。
皮膚疾患について詳しく国試に出るわけではないし、実習のレポートで皮膚疾患がメインになることもなかったため、いまも皮膚疾患への理解が非常に浅いままです。
病棟で褥瘡処置に使っていたものは、茶色い粘り気のあるもので、人によっては白い薬剤を使っているようでしたが、あれがどんな役割をしているのか、どんな名前かもわかりませんでした。
看護学生時代は重きを置いていませんでしたが、療養病棟での仕事では、皮膚疾患の知識が重要だと感じ、使える知識を得るために皮膚科でも働けないかと考えて、地元で求人がないかネットで探してみました。
「皮膚科専門医のもとで仕事できたら、勉強になるよな〜」
「あ、行ったことないけど、家から歩いて行ける距離にある皮膚科が看護師募を集してる……」
「でも新卒で看護師にならず、こないだ病院勤務を始めて、ほとんど何もできない看護師免許だけを持っている私が、クリニックに採用してもらえるわけがないよな……」
クリニックは、新卒で大きな病院に就職して3年ほど働いた後に転職する場所のイメージを。今の自分の状態では受かるとは思えません。
「でも、ダメ元で応募してみようかな……。縁がないならスルーされるだけだろうし」
応募するだけ、応募するだけ、えいや! と応募ボタンを押している自分がいました。