新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました……

▼バックナンバーを読む

突然のことに絶句……

タイムカードは配属フロアで押して、すぐに上のフロアに行き、朝の申し送りから食事介助まで行う勤務が続いています。

不思議な勤務スタイルだなと思いながらも、言われるがまま勤務していると入職時に担当してくれた総務の担当者がナースステーションにやって来ました。

総務人事担当者「まめこさんいます〜?」
私「はい、私ですか?」

(総務人事の人が私に何の用があるのだろう)

総務人事担当者「まめこさん、はいこれ」

渡されたのは茶封筒。
開けると名札が入っていました。

私「あの、これは……」
総務人事担当者「新しい名札ね」
私「新しい名札……?」

いまもすでに名札は付けているのに、そしてなぜわざわざ手渡しなのだろうかと、名札をまじまじと見ていると、記載されている所属フロアが変わっていました。

私「え……」
総務人事担当者「いままで下の階でタイムカード押してたでしょ? これからは直接ここにきて押していいから(ニコッ)」


突然のことに、理解が追いつきません。
下の階で一生懸命患者さんの名前を覚えようとしていたのに……。
やっと、看護助手さんの名前覚えられたのに……。
これから、看護師さんの名前も覚えようと思っていたのに……。

私「入職してすぐに異動とかあるんですか?」
総務人事担当者「そんなにあることじゃないけど、いまは2フロア同じ師長が見ているからね~」

助手のみなさんへの感謝

午前の仕事を終え、タイムカードを押しに下のフロアに下ります。

下のフロアで仕事を教えてくれた助手さんたちにどう言ったらいいんだろう……。
いきなりまったく会わなくなっちゃうのか……。

いろんなことを考えながら、助手さんの休憩スペースに行きます。

看護助手「まめこさん、今日もおつかれちゃん! お菓子持っていきな〜」
私「おつかれさまです。ありがとうございます」

言い出すのが、なんだか心苦しい。

私「あの、今日総務人事の人から新しい名札もらって」
看護助手「新しいの?」
私「私、異動するみたいで。次からはタイムカードも上のフロアで押してって言われて……」

看護助手「え!そうなの? まめこさんといっしょに働けなくなっちゃうのか〜」
私「いろいろと仕事教えていただいたのに、申し訳ないです」
看護助手「そんなこと思わなくていいんだからね! 上のフロアでがんばりな!」
私「すいません、ありがとうございます。もう次から上のフロアに直接行くのでみなさんにちゃんとあいさつできなくて、すいません」
看護助手「大丈夫よ。みんな応援してるから」

最初から最後まで、本当に優しいなんて……(涙)
看護助手さんには感謝しきれません。
関わった全員にあいさつできないのが心残りですが、このまま帰ります。

母からのひと言

お母さん「おかえり〜」

私はまず荷物を部屋に置き、手を洗面台で洗い、部屋着に着替えます。
ASD特性の独自のこだわりにより、私は挨拶全般が苦手で、「おはよう」とか「ただいま」とか言いたくないのです。

着替えてからリビングまで行き、小さな声で「ただいま」と言います。

私「なんか、異動になるみたい私」
お母さん「異動? 入職したばっかなのに?」
私「うん」
お母さん「刺激的にキャパオーバーになってない? 大丈夫なの?」
私「わからない〜。いままでも何回も特浴係として仕事しに行ってるし、そんなに大きな衝撃は感覚としてはないんだけど。異動?っていうのはある(笑)」
お母さん「まめこがキャパオーバーになっていないならよかった」
私「こんなに短期間で異動になるなら、最初からそこに配属すればよかったのにね」
お母さん「師長さんにとって想定外だったのかもよ」
私「?」
お母さん「意外と働けるじゃん!的な(笑)」

▼バックナンバーを読む



まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。