新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアを異動することになり、利用する休憩室、タイムカードを押す場所も変わり、どう振舞えばいいのか不安を感じながらの勤務が始まりました……
「もう少し」とは?
配属先が変わった初日は、いつも通り進んでいきました。
「まめこさん、配属この階になったんだから、これからは朝もう少し早く来るのよ」
心臓が、バクッとしました。
そうだよな、もう少し早く来るべきだよな。
でも、「もう少し」ってどれくらいなのだろうか。
ASDは抽象的な指示の理解が苦手です。
とりあえず次は20分前くらいに着けばいいかな。
それよりも早く出勤するの嫌だな、8時半からしか時給発生しないし。でも、看護実習していたとき、看護師さんたちは7時台から来ている感じだったし、「もう少し」って8時台じゃなくて7時台に来なさいよってことなのかな。私、新人だし。
ナース服は着ているけれど
入職時に暗くした髪の毛が徐々に明るくなってきた問題を解決しないといけません。
だいぶ明るくなっていましたが、幸い誰からも注意されないうちに美容院の日を迎えることができました。
美容師さんにカットイメージはメッセージ上で伝えましたが、色は決まっていません。
美容師「カラーはお決まりですか?」
私「あ、私、病院で働いているんですけど、いまだいぶ明るくなっちゃってて。病院で働いていても違和感ないくらい暗くしてください」
美容師「わかりました〜」
こんなとき、「看護師として働いているんですけど」と人に話せる日が私に来るのかな。まだ、私は言えない。
性格的にも「看護師」っぽくないし、スキルがあるわけでもないし。いまは自分から「看護師」と言うのはなんか変な感じがする。病院ではナース服を着ているけど、「看護師」では、まだなくて。次の勤務もちゃんと行けるか危うくて、働いているときも「1時間後も逃げ出さずに働けてるのかな」と自分に対して思うほどなので。
求人に応募していた皮膚科クリニックからの連絡
ヘアカラーをしてもらいながらふとメールボックスを見ると、ダメ元で応募した皮膚科クリニックからメールが届いていました。
「この度は、ご応募いただきありがとうございます。詳細は、明日、担当者よりご連絡差し上げます。お電話の場合、何時頃がご都合よろしいでしょうか? お知らせいただけると助かります。」
お断りメールだと思っていたので、驚きました。
これは、面接をしてくれるということでしょうか。
「ご連絡ありがとうございます。14時以降は電話に出られると思いますが、14〜15時のあいだがいちばん確実に出られます。よろしくお願いします。」
明日、電話かかってくるのかーーー
電話苦手だけど、がんばれ私~
美容師「色味こんな感じで大丈夫ですかね?」
メガネをつけて確認すると、めっちゃ暗くなっていました。
黒染めではないけど、めっちゃ黒だな。
黒すぎる気もしてきた……。
私「大丈夫です。ありがとうございます」
面接をしてくれるのだったら、このタイミングで髪を染めたのはグッドタイミングすぎる。これは運命的な感じなのかな。いい方向に事が進んでいる気がしました。
家に帰ると、お母さんは弟の髪の毛の上に何かを乗せて写真を撮っていました。
私「何してるの?」
お母さん「ダンゴムシちゃんの写真撮ってるの」
私「それ、かわいいの?」
お母さん「カワイイッ!」
弟は鎖骨下まで髪が伸びており、私は反対に刈り上げショートです。一般的には反対だよな~と、性格も性別も反対のほうが何かと上手くいったんじゃないかなと思います。
私「明日、クリニックから電話かかってくるから~」
お母さん「また応募したの?」
私「そう、ダメ元で送ったところ。私のスマホに電話来ると思うけど、一応ね」
お母さん「ダメ元って強いよね~、何でもできちゃう(笑)」
私「2回連続ダメ元で通るほど、人生スムーズにいくはずないと思うけどね(笑)」