新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアを異動することになり、利用する休憩室、タイムカードを押す場所も変わり、どう振舞えばいいのか不安を感じながらの勤務が始まりました。一方、ダメ元でアルバイトに応募した皮膚科クリニックから連絡があり面接を受けることになりました……

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面接に向けて

私「もしもし、まめこです」
事務長「初めまして、皮膚科クリニック事務長をしている者です。応募ありがとうございました」
私「はい」
事務長「早速ですが、面接の日程を決めたいと思っていまして。空いてるお日にちありますか?」
私「明日は午前で病院の仕事が終わるので、14時以降なら空いてます」
事務長「じゃあ、明日の15時でお願いできますかね?」

思ったよりも、早く面接の日程が決まってしまいました。発達障害を持っていることを言うべきか言わないべきか、臨床経験がほぼない私に対してどんな質問が飛んでくるんだろうか。黒髪になった私は病院の面接のときよりは、マシな見た目になっているけど……。

急いでスマホで履歴書を作って、コンビニで印刷をしました。

こんな職場があるんだ

明るくなっていた髪の毛を黒くして病院に出勤する最初の日です。

8時15分にタイムカード押して、何をしたらいいのかわからず、ナースステーションの真ん中でポツンと立っていました。みんな忙しそうで、誰に話しかけたらいいかもわかりません。

看護師「ほら、ほら、何してんの〜経管栄養を作りなさい〜」
私「?」
看護師「作り方わからないなら、あの人に教えてもらいなさい〜」

経管栄養を作るという言葉の意味がわからず、とりあえず指示された方向にいる看護師さんに声をかけます。

私「あの、経管栄養を作るの教えてもらいなさいって言われたんですけど、どうしたらいいですか?」
看護師「このチューブに100とか200とか書いてあるでしょ。それが水の分量だから、その量を量ってここに入れて」
私「はい」
看護師「それが終わったら、経管栄養を流してチューブ満たして、そこの台車に部屋順にかけといて」

患者の名前と部屋順がわからず、おろおろしている私を察して、そこのホワイトボード見たらわかるからと教えてくれました。

申し送りが始まる時間になると、点滴や物品の準備をしていた看護師たちが皆パソコンの前に座り始めます。経管栄養を準備し終わった私も丸椅子を持って、邪魔にならないところに座ります。

すると突然……

看護師「ねえ、師長! 師長が黒染めしろって言ったの?」
私(???)
師長「言ってないわよ(笑)。面接のときに1回髪の毛黒くできる?とは言ったけど、それ以降言ってないわよ。ねえ〜まめこさん?」
私「あ、はい(動揺)髪の毛が明るくなってきちゃったなと思って自分で黒くしました」

突然のことに大動揺する私。

看護師1「若いんだから、髪の毛好きにさせてあげなさいよ」
看護師2「私たちは白髪染めだからね〜(笑)」
看護師3「おしゃれ染めができるなんてね〜(笑)」

ぎゃはぎゃはと賑やかなナースステーション。
看護実習で回った病院はどこも、申し送り前も申し送り中も、シーンと張り詰めた空気で息苦しくなるような時間でした。でも、ここは全然違う。

怖いなと思っていた看護師さんでしたが、私を守ってくれているのか尊重してくれているのか、どういう意味かわからないですが、すごく嬉しかったです。

髪の毛が少し明るくてもしょうがないと流すのではなく、積極的に好きなようにさせてあげなさいと言ってくれる職場があるんだとすごくびっくりしました。

ここは、病院なのに。
新人看護師は、黒髪が当たり前なはずなのに。

改めて、すごい場所に配属になったなと思いました。

皮膚科クリニックの面接当日

15時の10分前に指定されて場所に行くと、すでに看護師さんが立って待っていてくれました。

私「はじめまして、今日面接を受けに来ましたまめこです」

看護師「お待ちしてました。こちらへどうぞ」

後にこの方が師長さんということがわかるのですが、このときの第一印象としては疲れているなと思いました。元気がなさそうというか。でも働き始めるとすごくチャーミングな方だったんですよね。第一印象って、当てにならないことを知りました。

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まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。