新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアを異動することになり、利用する休憩室、タイムカードを押す場所も変わり、どう振舞えばいいのか不安を感じながらの勤務が始まりました。一方、ダメ元でアルバイトに応募した皮膚科クリニックから連絡があり、面接にやって来ました……

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面接がはじまる

通された部屋にはすでに2人の男性が座っていました。真ん中に座っている方が院長で、隣には電話をかけてくれた事務長さん、出迎えてくださった師長さんが座りました。

私「はじめまして、まめこです。よろしくお願いします」
院長「履歴書もらっていい?」

履歴書をざっと見て、

院長「いま病院で働いてるってことだけど、そこを辞めてウチに来るの?」

私「いえ、受かったら病院とクリニック両方で働きたいと考えています。いまは病院で週3で働いているので、他の日に働きたいと思ってます」
院長「うん? いま学生なの?」
私「いま学校が休校になっているので、在籍はしているんですけど通ってはいないです。地元で看護師としてうまくやっていけるのであれば中退しようと思っています」
院長「ふ~ん」

面接の相手が3人とは思っていなかったですし、長所や短所など新卒で総合病院を受けるときのような質問までされるとは思っていなかったので動揺しました。

院長「病院だと皮膚科専門医が週に1回ぐらいしか来ないから、ここで学びたいってことだよね?」
私「はい。授業で皮膚疾患は全然触れてこなかったですし、まだ採血や注射もやったことないので、それらも含めて学びたいなと思ってます」

この雰囲気だと採用はないなと思い、とりあえず穏便に最後まで面接を終わらせることを目標にして、私は話していました。

行動せずにはいられない自分

そもそもいろいろおかしいですからね。

看護高等学校を卒業して、林業の学校に行って、新型コロナウイルス感染症の流行で休校になったから看護師を始めたけど、病院では週3しか働いていなくて、新人なのにダブルワークをしようとしている。

自分で自分のことを話していて、辻褄が合わない感というか、理解できない感じが自分でもわかります。でも、やりたいと思ったことは行動しないと気が済まないタイプなので、こうしてネットで応募して面接に来ました。

ASDはコミュニケーションに困難があって、五感過敏があって、一般的な人よりも刺激に弱いはずなのに、行動しないと気が済まないという真反対の思考もあって、本当に扱いづらい特性だなと思います。

院長「これで面接は終わりにします。結果に関しては後日連絡します」
私「お時間いただきありがとうございました」

ASD特性と行動力の矛盾

クリニックの面接では、発達障害に関してはいっさい話すことはありませんでした。新卒で看護師にならなかった理由も具体的には聞かれなかったですし、途中から受からないだろうなという気がしていたので、わざわざ話す必要もないかなと。

がんばった、がんばった。

一般的に見て自分が良いか悪いかを考えても、脳の機能がマイノリティーのため答え合わせはできません。だからこそ、自分が良いと思ったこと、やってみたいと思ったことは行動を起こして、その答え合わせをすることによって、自分のフィーリングや直感と一般的な人がどう思うかをすり合わせてきたような気がします。

シンプルに考えて、刺激に弱い体質なのに思い立ったらすぐ行動する自分の思考は矛盾しています。ですが、そういった行動は知的好奇心からくるものだと思います。ひどく内向的な部分を凌駕する、強い好奇心が私を突き動かしている。私は強烈な知的好奇心によって動かされている乗り物でしかないんだなとときどき感じるほどです。

でも、この特性のおかげで、私は社会との接触を切り離し過ぎずに生きられているんだなと思います。

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まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。