新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアを異動することになり、利用する休憩室、タイムカードを押す場所も変わり、どう振舞えばいいのか不安を感じながらの勤務が始まりました。一方、ダメ元でアルバイトに応募した皮膚科クリニックでは面接を受けましたが手ごたえは感じられませんでした……
面接からほどなくして一本の電話
私「もしもし、まめこです」
事務長「先日は面接にお越しいただきありがとうございました」
電話を受けて最初に思ったのは、採用はないだろうなと考えていたので、メールではなくわざわざ電話してくれるなんて律儀だなと。
事務長「まめこさんを採用ということで話を進めたいと考えています」
私「さいよう?」
事務長「はい、制服合わせに来ていただきたいのですが、都合いい日あります?」
私「えっと、来週の火曜日とかなら」
不採用でお断わりされると思って電話に出た私は、予想外の「さいよう」という言葉を聞いても、なかなか「採用」という文字が頭に浮かびませんでした。
聞き間違えかな? でも話の方向的に働き始める流れだな、どういうことだろう、とよくわからないまま電話を切りました。
制服合わせの日にクリニックに伺うと、面接時にドアのところに待っていてくれた師長さんがいました。
師長「こんにちは〜、これからよろしくね〜」
私「よろしくお願いします」
面接の日の元気がなさそうで、疲れていそうだった師長さんの姿ではありません。
師長「面接緊張したー?」
私「あんなに長所とか短所とか聞かれると思ってなくてびっくりしました」
師長「ね〜、クリニックなのに、なんかかしこまった感じでね。緊張しちゃうよね(笑)。ナース服サイズ知りたいから、何着か来てみて〜」
病棟とは違ったナース服とエプロン、鏡に映る私はまた違った雰囲気でした。病棟よりちょっとオシャレな感じ。
私「上も下もLがいいかなと」
師長「え? 細いのにL? 大きすぎない?」
私「そんなに大きすぎないです。私的にちょっと大きめの方が動きやすいんですよね。病棟のナース服は上XL着てます」
師長「そうなんだね〜!じゃあL頼んでおくね」
私のための勉強会?
ナース服のサイズ調整も終わり、靴のサイズも伝え、一通り準備は整いました。
師長「まめこさん、皮膚科初めてでしょ? 院長が勉強会開くって〜」
私「そうなんですか? 私のためにですか?」
師長「もう1人、まめこさんの後に入る方も含めてやろうって。でもその方は皮膚科の勤務経験あるみたい」
この皮膚科に勤めている看護師もだいたい40歳前後で、以前はもっと年齢層が高かったそうです。そんななか、採血も注射もしたことないド新人がクリニックに入職するなんて、あり得ないはずです。
看護技術もなければ、コミュニケーション技術もない。すべてにおいてたどたどしい私を迎え入れようとしてくれるなんて、院長も看護師さんたちも心が広すぎです。何もできない私のために、勉強会を開いてくれるなんて、本当に恵まれています。本当に私は運がいい。
「病棟経験なしではクリニックで働けない」という一般論
学生時代も「病棟経験がない人はクリニックで採用されない」と言われてきましたし、ネットで検索してもTwitterで看護師をしている人のツイートを見ても、同じような考えしかありませんでした。
でも、実際に動いてみると現実は違うこともあるんだなということを学びました。考えてみれば、そういった発信をしている人のうち、看護師経験がないもしくは浅いなかでクリニックの面接に行ったことがある人はきっとほとんどおらず、一般論や想像で語っているのだと思います。
採用されても続けられないとも、一般的には思われているのではないでしょうか。
ですが私は、ここから2年7カ月勤めました。長いと捉えられるのか短いと捉えられるのかはわかりませんが、皮膚科クリニックで学びたいことは一通り学べました。
早く業務が終われば、整形外科勤務経験がある師長さんに包帯の巻き方を教えていただき、院長の腕を貸していただいて採血の練習をしました。皮下注射も採血も、初めて行ったのは病棟ではなくクリニックでした。