新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアを異動することに! さらに、病院勤務に慣れるにつれて、あらたな業務も増え、ついに部屋持ちの話も出てきました……

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私の苦手な、予定外

師長「3月から新人さん入ることになったよ〜」

私が働いている病院は辺鄙な場所にありますし、配属されている病棟は新人を育てる病棟ではない雰囲気でしたので、同時に2人の新人の看護師が入職するなんて珍しいなと思いました。

師長「でさ〜、まめこさん、部屋持ち4月からにしようって話したけどさ、3月からできたりしない?」

私「!!? 3月からですか?」

師長「そうそう、新しく入ってくる子たちにはフリー業務についてもらいたいからさ」

入職からながらくフリー業務をやっていた私に、新しく入る人たちがフリー業務につくからと、押し出されるようにして「部屋持ちをしなければいけない」という現実が降ってきました。

私「……(やっぱり無理ですとか言えない状況になってしまった)」

師長「採血も練習しちゃおう!」

私「うぇ? え? いつですか??」

師長「私が時間空いてるとき〜♪」

人に触れるその不快感から、自分の心拍数が頭に響き、患者役の先生の脈と自分の心拍数が入り混じり正確に測れず、水銀血圧計での血圧測定のテストに落ちた学生時代を思い出します。

私「……(師長さんの腕、触れるかな〜私大丈夫かな)」

そんなどうしようもない心配から始まりました。

採血については、病棟で担当するのはだいぶ先だろうと思っていたのと、勤務する病棟に多い寝たきり高齢患者さんの細い血管よりもわかりやすい血管を経験したかったのもあって、先に皮膚科クリニックで先輩看護師の腕を貸していただいて練習したり、実際に患者さんの採血をしてきました。といっても、皮膚科では採血オーダーが少ないので2人くらいしか経験がありませんでした。

家に帰ってからは、教科書で採血の流れを確認し、ネットで採血の手技動画を観てイメージトレーニングをしました。クリニックとは物品が異なるので、そこで頭が混乱しないか心配ですが、やるしかありません。

そのときは唐突に

師長さんから採血の話が出て以来、勤務のたびに「今日採血やるのかな?」とドキドキしながら過ごしていました。

師長「いま時間あるー?」

私「あ、あります」

師長「採血やってみようか〜」

バットの中に必要物品を入れていきます。
これで大丈夫だよね? たぶん……。

駆血帯を巻いて、
親指を中に入れて手を握ってもらって、
アルコールでかぶれないか聞いて、
……。

師長「はーい、いま大丈夫ですよ〜、はい、はい」

師長さんが電話中なので終わるまで待っていようとしたら、「やって、やって」とジェスチャーしてくるではありませんか!

え、ちゃんと見ててくれるですよね……
手技を間違えてたら言ってくださいよ(泣)

血管に針を刺していきます。
無事、血が流れてきました。
駆血帯外してから、穿刺部にアルコール綿を軽くあて抜針します。

師長「大丈夫そうだね〜。針を抜くときはそんなにゆっくりじゃなくていいよ、痛いから(笑)。じゃあ、このままルート確保もやろっか〜」

採血だけだと思っていたため、予想外のことにフリーズしました……。

師長「大丈夫、大丈夫。採血できたらルートも取れるから〜」


ナースステーションとつながっている助手さんの休憩室として使われている場所で練習していたため、気づいたら続々と助手さんが集まっていました。

助手A「何してるの〜? 採血の練習?」

助手B「え〜、珍しい〜、どうやってやるの?」

ただでさえ緊張している私の周りに、看護助手さんだけでなく看護師も見にきています。

看護師A「師長、なに〜、練習させてんの(笑)? 私は絶対やだわ〜、痛いの無理だもん(笑)」

看護師B「私の血管見やすいから、私でよければ練習してくれて大丈夫だからね〜。がんばってね〜」

看護師C「まめこさんが緊張しちゃうから、ほらほらみんな戻るよ(笑)」

通常なら新人看護師が配属されない病棟のため、新人が緊張して練習している姿は物珍しい光景のようです。

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まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。