新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアを異動することに! さらに、病院勤務に慣れるにつれて、あらたな業務も増え、ついに部屋持ちすることに。そしてさらに次のステップへの動きが……

▼バックナンバーを読む

「独り立ち」の声が掛かる

先輩「ね〜まめこさん、師長たちがさ、もう独り立ちさせようって言ってるんだけど、まだ無理だよね?」

まだすべてが不安で、リーダーに報告するのも弱腰になって声を掛けるタイミングもよくわかっていないのに? 独り立ちできるわけがありません。

私「絶対無理です」
先輩「だよね〜、師長たちに言っておくね〜(笑)」

「直接見ていないから『もう独り立ちさせよう』とか言えるんだろうね」と先輩が言っていました。もしかしたらパッと見た感じではできているように見えるのかもしれませんが、めちゃくちゃ緊張しまくっている姿を近くで見てる先輩は独り立ちはまだ絶対無理という意見に賛同してくれました。

独り立ちしている自分の姿がまったく想像ができず、「独り立ちできそう?」と聞かれるたび、できる限りその日を引き伸ばそうと「まだ無理です」と言い続けました。

先輩「一人でやっていけそう?」
私「無理です〜、不安です〜」

そのうち「そろそろいいんじゃない?」派が増えてきたのか、ある時、週の勤務振り分けカレンダーの私と同じ欄に主任の名前が書いてありました。

先輩「この日に確認して大丈夫だったら、独り立ちさせるらしいよ(笑)」


それ以来、「この日に確認か〜」と意識しながら働く日々。

「先輩に聞けることはいまのうちに聞いておかないと」と思うも、もう大丈夫と思われているのか、私に付いているはずの先輩がほかの仕事の手伝いに行っていて、実質私に付いている時間が半分以下の日が増えていきます。

本当に私が一人でやっていけると思っているの?

口腔ケアはこんな感じでいいの?

サクションはこれで充分引けているって感じてていいの?

え、こんなに不安なのに?

私が一人でやっていくの?

突然のやってきた痛み

朝起きると右踵が腫れ、靴下を履こうとして触れようものなら痛みで声が出ます。

これ、靴履けないな……。

いつも通りの支度をして、半分だけ靴に足を突っ込んだ状態で自転車に跨ります。

非常に、こぎづらい……。

仕方なしに靴を自転車のカゴに入れ、裸足で自転車をこぐことにしました。

こんな状況でも前向きに仕事行こうとしてる私えらい〜と思いながら、素足にペダルのギザギザが刺さります。

力が、入れづらい……。


病院に着いて、この日はフリー業務担当だったので、経管栄養の用意に取り掛かります。

先輩A「ねえ、足どうしたん?」
私「えっと、朝起きたら腫れててめっちゃ痛くて、靴も履けなかったので裸足で自転車こいできました」
先輩A「え? やばいじゃん!」

あ、やばい? やばいのか……ん?

先輩A「今日、皮膚科の先生来てるよね? 午後だっけ?」
私「診て、もらう?」
先輩B「外来行ってくればってことよ」

私は知らないあいだにアザができていたり、火傷していたりと、私の体は「痛みがあるということはどういうことなのか」がよくわかっていなくて、このときもいろんなことがわかっていませんでした。


医療事務「まめこさん、外来呼ばれたよ〜」

素足のままナースシューズに足を半分だけ入れた状態で、患者さんたちが座って待っている横を通っていきます。

皮膚科医「今日はどうしたのかな?」
私「朝から足痛くて」

皮膚科医「あ〜これ、蜂窩織炎だね」
教科書で勉強したことあるけど、状態が悪い患者さんがなるものだと思っていました。まさか私が……。

皮膚科医「そのベッドに寝転がって」
外来看護師「こっち頭ね〜」
皮膚科医「これから切開して、膿出しますから」

え!? 急に?
気持ちがまったく追いついていないなか、着々と準備が進んでいきます。

皮膚科医「麻酔打つね〜」

皮膚科医「いま、痛みありますか?」

私「うーん、どうなんでしょうか」

皮膚科医「いま針を刺してるんですけど、痛みがないみたいですね」

針刺してる!? 驚き、痛みの心配などしている私は蚊帳の外です。

切開し排膿した後はガーゼと包帯で足を巻いていき、見た目が大事になっていきました。

猶予ができた

病棟に帰ると師長が早口で聞いてきました。

師長「どうだったの? 先生なんて?」

私「蜂窩織炎で、切開して排膿して」

師長「それで、働けるの?」

私「えっと……」

そこまで考えてなかった私はもごもごしていました。

私「働いちゃダメとは言ってなかったですけど、安静にしていたほうが治りは早いって言ってました」

師長「じゃあ、どうする?」

私「え、あ、うーん」

(沈黙)

私「休めるなら、休みたいです」

師長「わかった。良くなるまで休んで!」

即座に週間予定表の私の欄にスラッシュを書き込んでいき、勤務シフトをどうにかしようと考えている様子でした。

師長さんは蜂窩織炎になった私を責める雰囲気はなく、「休みたいのか、休まなくても良さそうなのか」をただはっきりさせてほしかったようです。また、私自身に判断させる機会を与えてくれたようにも思いました。

私の独り立ち確認予定日にスラッシュが書かれたとき、なんだか安心してしまいました。猶予ができたと。

▼バックナンバーを読む



まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。