新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、看護助手業務からスタートして、緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアが変わり、さらに病院勤務に慣れるにつれて、あらたな業務も増え、ついに部屋持ちをすることに! 自分の環境の変化に驚きつつも、これまでベテラン揃いの病棟で温かく育ててもらったことを感じています……

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1人でやり切らなければいけないこと

看護師が少ないときは1人でフリー業務を行うことも増え、自分の優先順位の付けかたや効率的に業務を行うことがまだまだできないことに、もがき、あがいていました。

フリー業務担当看護師「あの日、1人だったけど大丈夫だった?」

私「いや全然……処置終わらなさすぎて、最終的に終わったの15時過ぎとかで、ずっと焦ってました。もっとうまくできたらいいんですけど」

フリー業務担当看護師「なーに言っての。私がやってもね、それぐらい時間かかるんだから。そもそも業務量が多いの!(笑)」

このとき、はっとさせられました。

自分はどこから処置を回ったら効率的に終わるかがわかってないとか、どの助手さんに声をかけたら手伝ってもらえるのかがわかっていないとか、いろいろうまくできてない要素について考えていました。ですが、ベテラン看護師に「たいへんな業務量だよ」って言ってもらえると、自分の能力が低いからスムーズに終わらないんじゃなくて、そもそもの業務量が多いのだと認識することができました。
もちろん、先輩が同じ時間ぐらいかかるよと言ってるのは、私がやっている業務以上にほかの人の業務も手伝ったうえで15時くらいと言っているので、同じレベルということではありません。ただ、同じ業務をやりながらそうやって言ってくれる人がいることは救いだなと感じました。

同時期に先輩3人が辞めることに

ある日、いつものように申し送りを聞いていると、退職者3人の名前が挙げられていました。そのなかにフリー業務の長の名前がありました。

え? じゃあこれから誰がフリー業務の統制を取っていくの?

このとき、私は自分よりも先に誰かが辞めるということが理解できませんでした。私は自分がいつ辞めることになるんだろうと思ってきたし、この病院を去るのは私が先だと思ってきたから。

誰かを見送ることなんて、私の予定にはないのに。

また、私が部屋持ちを独り立ちするときに一番と言ってもいいほどサポートしてくれた先輩看護師の名前も退職者のなかにありました。

新人看護師を受け入れる病棟ではなかったため、1日のスケジュールをまとめた用紙はありませんでした。そのため、その先輩看護師が昼休みにご飯を食べながらわざわざ朝から夕方まで看護師が何をするかのタイムスケジュールを書き出してくれて、私はそれを頼りにこれまでずっとやってきたのです。

先輩看護師は「ところてん方式(誰かが入ったら誰かが辞めていく)だからね〜」と言って、爽やかに辞めていきました。さみしかったけど、私が独り立ちして安定して仕事をできるようになるまで見守ってくれたんだなと。もう大丈夫と思えるほど、私が一応1人でやっていけるレベルになったということでもあったんだと思います。

でも、この当時はここまでは客観視できていなかったように思います。

怖がる必要はない

フリー業務は、何かわからないことがあれば先輩が出勤してきたときに聞けばどうにかなるスタイルでしたが、これからはそうもいかなくなります。

後輩もいるなかで、私がリードしなきゃいけない部分も出てくる。先輩が辞めてからは、それまで私には見えていなかった「先輩がやっていた仕事」が見えてきました。

入職して3年目、部屋持ち業務を始めて1年間が経っていました。

「石の上にも3年」や「とりあえず3年は続けるべき」などとよく聞きますが、どうして3年なのかよくわかっていませんでした。でも、人が入ってきたり、出て行ったりする流れがあって、その環境の変化に応じて自分を調整していくことを学べるのがちょうど3年くらいということなのかなと感じました。

先輩たちがいなくなってしまうことへの寂しさもありましたが、私の感覚はもっと別のところにあって、適切な時期に、自分への適切な課題が降ってくるなと感じていました。

3年目でもなお、次の週には自分はいないんじゃないかという感覚もありましたが、たいへんなこともあるけど、その時々で私がクリアできる課題がその時にある。だから怖がる必要はないなのかもしれない感覚が私のなかにあって、それはその時、その感覚が降ってきたとも捉えられるし、私のなかで育っていったという感覚でもありました。

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まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。
経歴も年齢もバラバラな13人のナースが執筆した『めそめそしていた1年目の自分に 今の自分から伝えたい 看護師暮らしのサバイバル術』(2025年2月刊行)でも執筆を担当。




▼まめこさんの書籍(共著)




一般論じゃない、一般ナースの本音と経験則
布団を出るので精一杯、勉強どころじゃない1年目ナースが息をしやすくなるための回復体位的アドバイス集。経歴も年齢もバラバラな一般ナース13人が、しんどかった当時の自分と「業務&生活を立て直すヒント」を語り合います。『貼りまわれ!こいぬ』うかうかさんのイラスト&シール付き。