前回までのおはなし…
緊急事態宣言が発令されてから家の中で閉じこもっているうちに精神的に不安定になり、何をするのも億劫になっていた。それは面接を受けた後も変わらず、母親と公園に出かける日々を過ごしていたところ、病院から採用決定の電話がかかってきた。よろこびながらも、ナース服のサイズ合わせが2日後に決まり戸惑いが。面接で師長と髪を染める約束をしていたものの、思っていたよりも早く病院を訪れる機会がやって来て、金髪のままだったのです……
ポケットに入るサイズのノート、ペンを買った。
髪の色も、美容院で暗く染めてもらった。
おむつ交換や陰部洗浄、食事介助などの基礎看護技術は教科書を見てきた。
きっと大丈夫。
とうとうやってきた勤務初日
必要な物は揃えた。
荷物を持って病院に向かいます。
面接の日は歩いて向かったけれど、これからは自転車で通います。自転車だと、心の準備をする間も無く着いてしまうんですね。
駐輪場に自転車を止めて、思いました。
私、ほんとに働くんだなと。
病院の正面玄関から入り、いつものように総合受付に声をかけ、総務人事の担当者を呼んでもらいます。
総務担当者 「久しぶり~!今日は、健康診断受けてもらってから病棟に上がるからね~。朝ご飯抜いてきた?」
私「朝ご飯抜いてきました」
総務担当者「それじゃ、これから採血と心電図、レントゲンを撮りに行ってもらうので、荷物は総務の部屋に置いていってね!」
総務の部屋に荷物を置き、まず採血と心電図検査に行きます。
私「健康診断で来ました、まめこです」
外来受付「こちらお願いしまーす」
外来看護師「採血で気分悪くなったことありますか?」
私「ないです。」
(私もいつか、採血できるようになるのかな)
(できるようになりたいな)
外来看護師「右腕に駆血帯巻きますね」
怒張してくる血管を探している。
なかなか見つからなそう。
(私の血管、わかりづらいんだよな~。右腕は出ているほうなんだけどな)
外来看護師「ごめんなさいね~。左腕に巻きますね」
全く怒張していない血管。
(私の左腕で採血した人見たことないからな~)
私が人生でいちばん感動した看護師さんには献血ルームで出会いました。30代ぐらいの看護師さんが温めたりいろいろ試してくれても、まったく血管見つからなかったのに、奥から呼ばれた見るからにベテランの看護師さんが私の腕触って、1発で仕留めたときは圧巻でした。
そんな過去のすごい看護師さんのこと思い出していたら、採血が終わりました。結局、右腕から採血したみたい。心電図、レントゲン検査も順調に終わり、総務の部屋に戻ります。
私「検査ひと通り終わりました」
総務担当者 「じゃあ、荷物を置きにロッカーに行こうか!ロッカーの場所は教えてなかったもんね!」
広いとは言えないロッカールームに到着。
総務担当者「ここが、まめこさんのロッカーなので使ってね〜」
このロッカールームで、他の病棟の看護師さんたちと会うことになるのかと思うと、怖い人がいたら嫌だな、実習のときみたいだな、などといろいろ考えてしまい、緊張しました。私は毎日、ロッカールームの圧迫感に耐えられるのか。
いよいよ病棟での仕事が始まる
総務担当者「入職前にやることは終わったから、師長さんに電話かけるね〜!」
すぐに、師長さんが迎えに来てくれました。
師長「髪の色、暗くしたんだね~。いいじゃん!」
私「ナース服合わせのときは間に合わなかったんですが、GW中に美容院に行ってきました」
エレベーターに乗り、働く病棟が近づくにつれ私の脈拍数も上がります。
いよいよです。
師長「今日、主任もいるから紹介するね~」
主任さん怖くないといいな~と思いつつ、師長さんが優しいと主任さん怖いパターンが多いからな……。という実習病院での経験がよみがえります(涙)。
師長「主任の〇〇さんです」
私「今日から働くまめこです。よろしくお願いします」
主任さん「よろしくね~」
主任さんは優しそうでした(涙)。
こんなことってあるのでしょうか。
師長「このまま助手さんたちといっしょに動いてもらうから、助手のリーダーさんに付いていってね!ちょっとリーダーさん呼んでくる!」
貴重品を入れた荷物を棚に入れ、待っているとリーダーさんが来てくれました。
リーダー「久しぶり〜。今日からよろしくね!」
にっこりして話しかけてくれたリーダーさんの顔を見て、ほっとしました。
ここならたぶん、やっていけそう。そう感じました。
リーダー「いま、お風呂の時間だから、患者さんが出てきたら助手について一緒に患者さんの着替えを手伝ってね!」
入浴室前にたくさんのベッドが並んでいます。
患者さんが入浴室から出てきたら、ストレッチャーからベッドに移す。そのままベッドごとお部屋に向かい、更衣をして、髪の毛を乾かし、体位変換をする。
1人の患者さんが終わったら、また入浴室前に行って次の患者さんが出てくるのを待ちます。その間に患者さんの洋服やオムツを準備して、抑制帯やミトンの交換日であれば、新しいものに替えます。
助手さんたちは、患者さんの服のサイズはもちろん、着物タイプなのかセパレートタイプなのか、靴下は履くのか、おむつのサイズ、必要なパットの数、抑制帯が必要なのか、ミトンの有無まで、患者さんごとにすべて把握していました。
大袈裟ではなく「これはやばい」と思いました。これから覚えることが多過ぎます。
スムーズな業務を行うために、50人ほどいる患者さんの名前や特徴について覚える必要があります。それに加えて、看護助手さん、看護師さん、医師の名前も覚えなければなりません。
本当に私に覚えられるだろうか……。
結局、私はこの2カ月後。患者さんの名前を覚え切ることなく異動になるのですが、その話はまた後ほど。
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。