入浴介助に続き、想定外だった食事介助にも入ることになり、初めてのことに戸惑いながらも業務を終えることができました。マルチタスクで2人以上の患者さんの食事介助をする助手さんにも驚きました。ちょうどこのころ、腰に痛みを感じるようになっていました。痛みで座ることができなくなり、寝るか立つしかできず、歩くときの振動でも痛みが増強するほどに。もしかしたら働けなくなるのではないかという危機感から、整形外科を受診することにしました……
膨らむ不安
歩くたびに痛む腰。
たまに電流が走ったような痛みを足に感じていました。それに尿失禁も。
せっかく縁があって、周りにも恵まれて、いま働けてるのに、腰のせいで働けなくなってしまったらどうしよう。
やっぱり私は看護師に向いてないのかもしれない。
この世界に足を踏み入れたらいけなかった人間なのかもしれない。
現実が具体的になるのが怖くて、病院に行くのを迷っていました。
入職したばかりなのに、もし辞めることになったら採用してくれた病院にも申し訳ない。障害に対する配慮をしてもらえているのに、身体的に困難が出てくるなんて、想像もしていなかった。
あらためて、働くことの難しさを感じていました。
でも、怖くても、やはりはっきりさせないといけない。
クリニックに行くことを決意しました。
中学時代のことが頭によぎる
家からいちばん近い整形外科のクリニックに向かいました。
このクリニックに行くのは中学3年生の最後の大会の直前に足首を捻挫して以来です。当時バレーボール部だった私は、朝練でスパイクをブロックしたときに相手の足を踏んでしまい、そのまま倒れました。いままでに感じたことのない激痛で、涙が溢れました。
顧問からも保健室の先生からも、すぐに病院に行ったほうがよいと言われましたが、授業は絶対に欠席したくなかったので、全部の授業を終えてから、放課後に自分でクリニックに行きました(当時、私が目指していた看護科の高校は早退や遅刻、欠席等が厳しく見られると聞いていたので、少しでも落ちる可能性を作りたくありませんでした)。
足首が痛むなかクリニックまで歩き、診察の結果、足にヒビ入ってるかもしれないと言われ、足首は包帯でぐるぐるに巻きになり、松葉杖生活になりました(授業も全部出て、自力でクリニックまで歩いて行って、次の日からはまともに歩けず、階段もうまく登れない姿を見て、同級生は衝撃を受けていました)。
写真の前から7番目、膝にサポーターつけてないのが私です。ギブスをつけたまま部活動壮行会に出たときのものです。
中学生最後の大会の直前だったので、結局、試合にはほとんど出られませんでした。予選でサーブを打つためだけに交代でコートに入り、サーブで何点か取ってまた交代して、私の中学3年間の部活生活は終わりました。呆気なかったですね。
ちょうど同じ時期に志望校の文化祭がありましたが、駅から遠く、校舎も広い学校だったので松葉杖で行くこともできず、高校の雰囲気や先輩に会って情報収集もできませんでした。小学4年生からこの高校を目指してきたのに、もしかしたら縁がないかもと、そのとき感じていました。
悔しくて、悲しくて、怖くて、どうしていいかわかりませんでした。なぜなら内申点のために私は部活に入ったから。受かるために部活に入ったのに、その部活のことで未来が絶たれるかと思うと怖かったのです。
私の志望校は県内全区域から受験者が集まり、たった40名しか受かりません。私の中学から受けた先輩も受かった先輩もおらず、近隣の中学校にもいませんでした。だから、文化祭に行って実際に通っている人たちがどんな人なのか見て、イメージを膨らませるためにはとても貴重な機会だったのです。
でも、その機会を喪失してしまった。
チャンスを逃してしまいました。
中学生のときと似たような気持ちを感じながら、また整形外科のクリニックに向かうなんて想像していませんでした。人生は、似たような経験を繰り返すのかもしれません。また何か機会を逃がしてしまうのでしょうか。
診察へ
クリニックに入ると、ご高齢の方がたくさんいらっしゃいました。診察を待っていると、定期的な通院の方やリハビリの方などさまざまです。
椅子に座って待っているときも、足がしびれ腰が痛みます。身体機能の低下や活動制限の受容は時間がかかるよなと、ぼんやり考えていました。腰の神経をやられているのかな、ヘルニアなのかな、入院まではいかないだろうけど、仕事は休んでくださいとか言われちゃうのかななど、いろんなことが頭の中を駆け巡ります。
そしてついに私の順番になりました。
名前を呼ばれたと同時に心拍数が急激に上がります。
どうか、治せるものでありますように。
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。