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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:エス・シー

「エス・シーします」
看護師さんなら「エス・シー (sc)=皮下注射」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。

「エス・シー」は英語だし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「エス・シー(sc)」は、英語で「皮下注射」を意味する「Subcutaneous Injection」の「Subcutaneous」からとった略語です。

これが通じないのは、略語が違うからです。

英語圏の医療現場では、皮下注射は「sub-Q(サブ・キュー)」を使います。
「sub」は、「subcutaneous」の最初の3文字です。
「Q」は、「Subcutaneous」の「cu」の発音を一文字の「Q」で表現しています。
日本の医療現場でも「皮下注射」を「サブ・キュー」と呼ぶところがあります。
その場合は、発音の心配なく通じる英語です。

冒頭で紹介した「thanq」は、「thank you」を意味するSMSのスラングです。
「-kyou」の発音を「q」の一文字で表現しています。
ちなみに、「q」一文字だけのときは、あまりいい意味ではありません。
「q」の発音ではなく、指を下に向けてブーイングしている様子を「q」で表します。

ちなみに、「筋肉注射」は「アイ・エム(im)」と略して使います。
これは、英語圏でも通じる略語です。

•Insulin is generally given by subcutaneous injection.
(インスリンは通常皮下注射で投与します)

※日本語同様、患者さんには注射の略語は使いません。「sub-Q」ではなく正式名称の「subcutaneous injection」で説明することをお勧めします。ただし、「injection」は「shot」に置き換えてもいいでしょう。





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


音楽、建築、数学などさまざまな分野で名声を轟かせ、人類が生んだ天才と称されたイタリアのルネサンス期を代表する芸術家「レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)」の言葉です。
「sophistication」とは、「洗練」「精巧」「高度化」などという意味があります。
はじめは、「simple is best」と同じ意味で「シンプルなのが一番」という身近で軽い感じなのかと思っていました。
しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチという天才の言葉は、奥が深い。


芸術の分野に限らず、美しいものや革新的なものはシンプルです。
例えば、「iPhone」。
「電話」という意味の「phone」に「i」を付けて、電話の概念を180度変えてしまいました。
あるのが当たり前だったボタンはなくなり、スクリーン画面に置き換えられました。
iPhoneの特徴は、洗練されたネーミングと無駄な装飾の一切ないシンプルな美しさです。
洗練すればするほどシンプルに近づいていく。無駄なものを削ぎ落し、洗練に洗練を重ねたものこそ美しい。
それは、決して容易なことではなく、圧倒的なセンスとインスピレーションを必要とする天才の成せる業です。
「簡単=シンプルと考えていた自分が恥ずかしい……。iPhone買おう!」と、思い立ってから今日まで私はiPhone一筋です。
ときどき、iPhone本体をカバーから取り出して眺めるとやっぱりきれいです。
洗練されたものを見ると、不思議と心が軽くきれいになった気がします。

最近、お仕事で掲示物を作る機会が増えました。
病院にありがちな掲示物ではなく、iPhoneを参考にシンプルさ美しさを追求しようと心がけています。
出来上がりが楽しみです(^^)

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。