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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。
本日のカタカナ英語:ラパロ
「ラパロ手術」「ラパロ下でのオペ患です」
看護師さんなら「ラパロ=腹腔鏡」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
「ラパロ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?
「ラパロ」は英語で「腹腔鏡」を意味する「laparoscopy」の略語です。
「ロ」にアクセントを置いて「ラパロスコピィー(læ̀pərɑ́skəpi)」が英語に近い発音です。
「laparo-」はギリシャ語由来で「腹壁」、「-scopy」は内視鏡など鏡を使った検査や手術に使われる接尾語です。
ちなみに、開腹手術は英語で「laparotomy」です。「ラパロトミー」が英語に近い発音です。
みなさんお気づきですか?
日本の医療現場では「ラパロ=腹腔鏡下の手術」ですが、英語圏では「おなか」の意味しかないので腹腔鏡としては通じないのです。
「腹腔鏡下手術」は「Laparoscopy」以外に「Keyhole surgery」と呼ばれています。
現在では開腹のほうがめずらしいくらい普及している腹腔鏡下の手術ですが、はじめて腹腔鏡が用いられたのは、日本がまだ明治時代の1901年ドイツ人の消化器外科医ゲオルグ・ケリングによるイヌの腹腔内の観察だと言われています。当初は、検査目的の開腹を避けるために考案された技術でしたが、手術にも応用され、低侵襲の手術として消化器外科手術の主流となりました。
日本で腹腔鏡による手術がはじめて行われたのは1990年です。明治時代に始まった技術が平成になってやっと日本に導入されており、世界的にみてだいぶ遅れをとっていたことがわかります。しかし、腹腔鏡が導入されてから約30年で「ダヴィンチ」などのロボット手術も導入されるなど飛躍的な進化を遂げている分野でもあります。
私は、実際にOPE室で「ダヴィンチ」を見せていただく機会があったのですが、“すごい時代が来たなぁ……”と軽くショックを受けました。保険適用となる術式もどんどん増えていくなか、今後はロボット手術が主流となる日もそう遠い未来ではないのかもしれませんね。
•You are having laparoscopic surgery tomorrow at 9 AM and it will take about 2 hours.
(明日の9時腹腔鏡下の手術が予定されています。手術時間は約2時間です)
30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。
今回も「トム・ソーヤの冒険」などの著者で知られるアメリカの小説家マーク・トウェイン(Mark Twain)の言葉を紹介します。
「トム・ソーヤの冒険」の続編として書かれた「ハックルベリー・フィンの冒険」という本をご存じでしょうか。その内容は、アル中の父親から始まり、殺人・泥棒・詐欺師・偽善者などさまざまな人間と遭遇しならが旅を続ける衝撃的な内容です。
人種差別的表現も多く、発行直後から閲覧制限や禁書処分になるなど論争が絶えないのも納得の内容なのですが、読み始めると一気に引き込まれます。
「人生で最も大切な2つの日」という彼の名言は、子ども向けとは思えない激辛な内容の本とはあまりにも対照的で、子どもに伝えたい温かな言葉だったので印象に残っています。
大切な日の1つが「the day you are born」というのはなんとなくわかりますよね。あなたが生まれた奇跡の1日は、両親にとってもかけがえのない日、兄弟にとっても家族が増えた大切な日です。
そして、2つ目の「the day you find out why」は、あなたが自分の生涯をかけて果たしていきたいことが見つかった日のことです。どんな人生を歩むか思い悩んで答えが出たとき、あなたが生まれたときにみんなに与えてくれた幸福感と同様の幸せに包まれることでしょう。
自分の生き方や方向性は探っていくと変わるものです。だから、「the day you find out why」は何度か訪れるかもしれません。
でも、その日が人生で最も大切な2つの日のうちの1つと知っていたら、なおのこと喜びは大きく、忘れられない日となるでしょう。
自分の子どもには、無限の選択肢のなかから自分の生きる目的を見つけるのは自分であることを伝えたい。そして、選択肢を広げられるようできる限り経験の機会を与えて、選んだことは尊重する。そうした姿勢で子どもを見守りたいと、今日の言葉を通して思っています。
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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。