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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:レスピ

「これからレスピつけるって」「レスピの患者さん3名入院中です」
看護師さんなら「レスピ=人工呼吸器」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
「レスピ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「レスピ」は、英語で「保護マスク」を意味する「respirator(レスピレィター)」の略語です。
「え?」と思われた方はいらっしゃいますか?
「respirator」は、多くの医療・看護用語集などで「人工呼吸器」と訳されていますよね。
でも、英語圏の医療現場では、鼻と口を覆って空気感染などを防ぐ医療用のマスクを「respirator」と呼ぶことが多いです。
例えば、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い需要が高まったN95マスクは「N95 respirator mask」です。ちなみに、「95」の由来は、空気感染対策として3㎍の微粒子を95%以上捕集できるからだそうです。

「人工呼吸器」は英語で「ventilator」です。最初の発音は「べ」ではなく「ヴェ」となるように意識して、「ヴェンティレイタァ(véntəlèitər)」が英語に近い発音です。

2020年~2021年にかけて、「ventilator」という言葉はメディアを通して頻繁に使われました。
例えば、New York Times(ニューヨークタイムズ)は「There Aren't Enough Ventilators to Cope With the Coronavirus (コロナウイルスの治療に対応するための呼吸器が十分ではない)」
Wall Street Journal(ウォールストリートジャーナル)は「As Coronavirus Hospitalizations Surge, Ventilator Manufacturing Ramps Up—but Not Quickly Enough(コロナウイルス患者の入院が急増し呼吸器を増産、それでもすぐには追いつかない」などです。
「ventilator」は、すこし難しい医療用語なので「breathing machine(呼吸をする機械)」といった簡単な表現に置き換えて患者さんに説明したほうがいい言葉でした。しかし、コロナの影響でだれもが知る医療用語となり、現在はそのまま患者さんに使ってもほとんど問題はないでしょう。

さて、もうすこし「respirator」と「ventilator」の違いを説明しましょう。
「respirator」も「人工呼吸器」という意味があります。でも、世界が「人工呼吸器」を「ventilator」と呼ぶにはちゃんと理由があります。
「respirator」は、「呼吸」という意味の「respiration」から派生した言葉です。呼吸は、たんに酸素と二酸化炭素の換気だけでなく、肺胞でのガス交換や血液の循環も含みます。
でも、実際に人工呼吸器が行っているのは換気だけなので、「換気」を意味する「ventilation」から派生した「ventilator」を使うほうが望ましいという考えから、「人工呼吸器」は「ventilator」という表現を使います。
まだまだ日本の医療現場では「レスピ」や「レスピレーター」という表現が根強く残っていますが、そろそろ見直していかないといけませんね。

•If you have difficulty breathing and cannot breathe on your own, your doctor may use a ventilator.
(もし呼吸困難になり自分で呼吸ができなくなったら、人工呼吸器を使います)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


17~18世紀に活躍したイギリスの詩人、アレクサンダー・ポープ (Alexander Pope)の言葉です。
普段あまり目にしない「courtship(求婚や求愛)」や「wedlock(結婚生活)」という言葉が使われていますが、内容はどこか普遍的で思わず「うんうん」とうなずいてしまいます。
夢見がちな恋を表現した日本語として、「恋は盲目」や「あばたもえくぼ」という言葉がありますよね。
恋をすると相手や周りに対して冷静な判断ができなくなってしまう。
相手の短所も長所にかえてしまい、家族や社会の信頼すら裏切ってしまうケースも少なくありません。
恋のキューピットが盲目の子どもとして描かれるのは、まさに盲目な恋心や相手にしょっちゅう騙される信じやすい無邪気な心を表わしているからだそうです。
とはいっても、相手に夢中で毎日がキラキラした恋愛期間は、幸せパワーにあふれる楽しい時間ですよね。
でも、恋愛パワーは3年しかもたない期間限定のようです。脳科学の観点から、恋愛感情をつかさどるドーパミンの分泌はせいぜいもって3年だからです。

私は、若いうちにどんどん恋愛をして、何度も騙されてOKだと思っています。
騙されたらすこしは学びます。同じ失敗を繰り返す人もいますが、たいがいは経験則で相手の選び方や恋愛の仕方が変わってくるものです。それが、最終的に結婚相手を探す糧になれば騙された経験は実を結びます。
また、目覚めた夫婦も決して悪いものではありませんよ。
恋愛パワーが枯渇したぶん、結婚相手や周囲への冷静な判断や妥協が可能となります。残念ながら、結婚生活に終止符を打つこともゼロではありませんが、結婚はある意味ギャンブルなので仕方がないでしょう。これも、立派な人生経験です。
一番もったいないのは、恋愛や結婚に慎重で臆病になりすぎて前に踏み込めないことでしょうか。若いうちはどんどん失敗して経験を積みにいく「石橋から落ちてなんぼ」の精神くらいがちょうどいいと私は思っています。20代はぜひ、臆することなく積極的に恋愛を楽しんでくださいね。余計なお世話で大変申し訳ありませんが、恋愛を躊躇する方々の後押しになれたら幸いです。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。