荒川 弘之 あらかわ・ひろゆき
エルムスユナイテッド未来医療研究所
代表取締役所長・社長/
エルムスユナイテッド動物病院グループ


藤間 裕子 ふじま・ゆうこ
エルムスユナイテッド未来医療研究所
取締役・事業統括部門長/
エルムスユナイテッド動物病院グループ


宮﨑 徹 みやざき・とおる
一般社団法人AIM医学研究所 代表理事・所長


ネコが慢性腎臓病(CKD)を発症する背景


 遺伝的な要因
ネコが慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)を発症する背景は単一ではなく、加齢や遺伝的素因、過去の病歴、生活環境など複数の要因が関与するといわれています。

例えば、平均的なネフロン(腎臓の機能単位)数はヒトで200万、ネコで40万であり、ネコの腎臓は年齢とともに構造的・機能的な変化を受けやすいです。また、特定のネコ種(ペルシャとその交配系、アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールドなど)では、遺伝的に腎疾患を起こしやすい傾向があります。

さらに、ネコは尿路感染症や腎盂腎炎、尿路結石が生じやすく、これらをきっかけとしてCKDの症状が顕著となることがあります。猫伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis;FIP)や高血圧、甲状腺機能亢進症などもCKDを増悪させる要因となります。


 環境的な要因
長期間にわたる高リン(P)・高ナトリウム(Na)含有の食事の摂取や、水分摂取量が少ない生活、とくにドライフード中心で水をあまり飲まない場合は、慢性的に軽度の脱水状態になりやすく、CKDの要因となります。ほかにも、ユリ科植物や一部の薬剤(非ステロイド性抗炎症薬[non—steroidal anti — inflammatory drugs;NSAIDs]や特定の抗菌薬)はネコの腎臓に対して強い毒性をもち、急性障害をきっかけに慢性化することがあります。

CKDとAIM

前述の要因だけではネコにおけるCKD罹患率の突出した高さを説明することはむずかしく、AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)の先天的な機能異常が重要な要因となっていると考えられます。

AIMは、筆者である宮﨑らが1999年に発見した血中蛋白質で、およそ5μg/mLの濃度でヒト・ネコ・マウスなど幅広い哺乳類に存在します1)。AIMは、CKDの重要な病態である慢性炎症の要因となる、さまざまな炎症性の「生体ゴミ」(細胞の死骸やダメージ関連分子パターン[danger—associated molecular patterns;DAMPs]、終末糖化産物[advanced glycation end products;AGE]など)と結合し、マクロファージなどの貪食細胞によるゴミの効率的な捕食・除去を誘導することで、腎臓病をはじめとする多くの疾患に対し予防・治療効果をもつことがあきらかになっています2~8)

引用・参考文献
1)Miyazaki,T.et al.Increased susceptibility of thymocytes to apoptosis in mice lacking AIM,a novel murine macro phage?derived soluble factor belonging to the scavenger receptor cysteine?rich domain superfamily.J.Exp.Med.189(2),1999,413-22.
2)Arai,S.et al.A scavenging system against internal pathogens promoted by the circulating protein apoptosis inhibitor of macrophage(AIM).Semin.Immunopathol.40(6),2018,567-75.
3)Arai,S.et al.Apoptosis inhibitor of macrophage protein enhances intraluminal debris clearance and ameliorates acute kidney injury in mice.Nat.Med.22(2),2016,183-93.
4)Wang,CT.et al. High salt exacerbates acute kidney injury by disturbing the activation of CD5L/apoptosis inhibitor of macrophage(AIM)protein.PLoS One.16(11),2021,e0260449.
5)Maehara,N.et al.AIM/CD5L attenuates DAMPs in the injured brain and thereby ameliorates ischemic stroke.Cell Rep.36(11),2021,109693.
6)Kurokawa, J.et al.Macrophage—derived AIM isendocytosed into adipocytes and decreases lipid droplets via inhibition of fatty acid synthase activity.Cell Metab.11(6),2010,479-92.
7)Maehara,N.et al.Circulating AIM prevents hepatocellular carcinoma through complement activation. Cell Rep. 9(1),2014,61-74.
8)Matsuura,K.et al.Two independent modes of kidney stone suppression achieved by AIM/CD5L and KIM-1.Commun.Biol.5(1),2022,783.

今日のがんばる家族



名前 いなり
年齢 10歳
性別 メス
種類 アメリカンショートヘア
腎臓病歴 6年

いままでの私の人生、ほとんど猫といっしょでした。結婚してからも猫が飼いたくて飼いたくて、「子猫が捨てられていたら連れて帰っていいよね」と夫に毎日言い聞かせていました。結婚3年目に、夫が私と誕生日が一日違いの子猫をブリーダーサイトで見つけてくれて面会予約し、その日にわが家に迎えることを決めました。伏見稲荷大社近くに住むブリーダーから譲っていただいたので、名前を「いなり」にしました。

「お猫様」としてわが家に幸福をもたらしてくれますが、同時に病と向き合う日々でもありました。もらってきた日から下痢が止まらず、病院に行くも治らずに、セカンドオピニオンで行った病院で猫コロナウィルスへの感染がわかりました。猫伝染性腹膜炎(FIP)発症の恐怖におびえながら、まだ小さかったいなりに毎日投薬しました。

4歳のころには腎臓に石があることと、腎機能がすこし低下していると診断され、早期ケアとして療法食を開始し、水分補給やストレスケアなどを意識して行いました。

7歳のときには、腎臓にあった石が尿管に落ちて詰まり、手術入院をしました。そのときのCT検査で、片方の腎臓が奇形であり、先天的に腎臓が悪くなりやすい状態だったことがわかりました。

9歳のときには炎症性腸疾患(IBD)を発症し、くり返す膀胱炎のため、現在も毎月病院に通っています。腎臓の数値は正常値をキープしており、早めのケアが功を奏しているのかなと思います。

月や太陽のようにいつもかならずそこにいて、私を癒し、支えてくれるいなりの存在は何ものにも代えがたいものです。この子を救える薬剤の開発や医療の発展を願いながら、いま私ができる最大の努力を続けていきたいです。(大阪府/aki)



「透析ケア」2026年32巻9号より再掲


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*2025年6月当社調査