東京2025デフリンピック!

「最も歴史のある障害者スポーツの国際大会」「4年に1度で100周年」「日本初開催」。

こんな素敵な文言が並ぶ聴覚障害者の国際総合スポーツ大会である「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025(東京2025デフリンピック)」が2025年11月15日に開催されました(#004 8時15分前に来てと言ったのに)。開会式と閉会式を除き事前申し込みは不要で、しかも無料で観戦できるというのだから、これはもう今すぐ観に行くしかない!

パラリンピックよりも歴史が古い

デフリンピックのデフとは英語の“deaf ”、「耳が聞こえない」という意味です。デフリンピックは聞こえない、聞こえにくい人の国際スポーツ大会のこと。

身体障害、視覚障害、知的障害のあるアスリートが参加するパラリンピックは1960年から開催されていますが、デフリンピックの歴史はさらに古く1924年から開催されています(ちなみにオリンピックは1896年から開催)。

補聴器などを外したときに聞こえる一番小さな音が55デシベルを超えていることなどが参加条件とされています。これは普通の声での会話が聞こえないレベルです。

21競技 オリエンテーリングやボウリングも

東京2025デフリンピックは81の国と地域などから3,081人の選手が参加しています。東京を中心に、福島、静岡で21競技が行われます。各競技はオリンピックとほぼ同じルールで行われるので、知っているスポーツならすぐにわかります。

また、オリンピックにはない競技として、「オリエンテーリング」「ボウリング」があります。オリエンテーリングは、地図とコンパスを使ってチェックポイントを回り、早さを競う種目です。

私は先日「バスケットボール」を観戦してきました。迫力のあるプレーで、会場は盛り上がっていました。手話のできる人もできない人も、楽しく観戦できました。

視覚による合図

競技中は補聴器などの使用を認められていないので、音による合図はできません。そのため、「スタートの合図はピストルの代わりにランプの点灯で」「サッカーでは笛に加えて旗を振って合図」「バレーボールでネットに触れたら、審判がネットを大きく揺らす」など視覚による合図をしています。

監督やチームメイトとのコミュニケーションも視覚、つまり手話を使います。なお、手話には、その国、その地域の独自の手話言語がありますが、国際手話という世界共通の手話言語もあります。手話はやはり言語なのだと感じられます(#001 ろう者と筆談してはいけない)。

パチパチではなくヒラヒラ

応援でも視覚を重視しているのはデフリンピックならではと言えるでしょう。よい記録やプレーが出れば、聴者は拍手をしますが、パチパチと手を叩いても選手には届きません。拍手の代わりに、拍手の手話で選手の健闘をたたえます。拍手の手話は、両手を挙げて手を開き、ヒラヒラと手首を細かく何度も回転させます。簡単なので覚えておくとよいでしょう。

ほかにも電光掲示板に音声アナウンスの字幕通訳が表示されるなど、聴覚に頼らない情報提示の工夫が各所に見られます。

競技観戦のほかにも、デフスポーツを体験したり、スタンプラリーがあったりするデフリンピックスクエアも用意されています。繰り返しますが、自国初開催の100周年の国際スポーツ大会が事前登録不要で、無料で観戦できるのです。これはもう行くしかありません!

まとめ

〇デフリンピックは聞こえない、聞こえにくい人の国際スポーツ大会。
〇審判が使うのは笛や旗。スタート合図はピストルではなくランプ。応援は拍手ではなく拍手の手話。
〇東京2025デフリンピックは自国初開催の100周年大会。観に行くしかない!

今回は「番外編」として、現在開催中(2025年11月15日~26日)のデフリンピックを紹介しました。
本連載では、「手話と医療、ろう者に関するハッとするような常識・非常識」「日常では気づきにくいが、気づかなければいけなかったこと」などを取り上げていきます。

明日からとは言わず、必ず今日から誰かの役に立つ内容です。是非シリーズを最後までご覧になってください。

※本内容はすべてのろう者、聴覚障害者やそのご関係者にあてはまるものではありません。
※手話表現には、地域差、個人差があります。ご自身の周囲の手話表現を大切にしてください。
※一部の競技では入場規制がかかるなどしています。観戦などの際は公式の最新情報を参照してください。


参考文献
1)東京2025デフリンピックのサイト
https://deaflympics2025-games.jp/#gsc.tab=0




山本基佳
相澤病院 救急科 医長
中高生の頃にマンガ『ブラックジャック』と海外ドラマ『ER緊急救命室』に影響され医学部を受験するも不合格。1浪して東京慈恵会医科大学へ。その後は松本市の相澤病院で初期研修をして救急医になる。書籍『無名の医療者が医学書を出版するまでの道(メディカ出版)』『季節の救急 第2版(日本医事新報社)』などの単著を出版後、京都大学大学院で専門職学位課程(社会健康医学修士)を修了。コロナ禍に筆談でろう者を診療していたが、実はまるで通じていなかったとあとでわかり衝撃を受ける。今は手話と医療に関する本を出版したい。

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