みなさん、こんにちは。

今回は、訪問看護での現場である利用者さんのご自宅にお邪魔する際の、私たち訪問看護師のふるまい方の大切さについてお話したいと思います。

新人のときに勤務していた病院で、上司に「看護師は演じろ、女優になれ」と口酸っぱく指導されていた経験があります。その当時は「どういうことだろう」「自分がしんどくても元気にふるまわないといけないのかな」というくらいにしか感じていませんでした。しかし年数が経過し、少人数で訪問させてもらう仕事に就いた今、利用者さんに「しっかりと見られている私たち」ということがわかりました。自分たちの所作一つで不愉快にさせることがあったのです。

当たり前のことなのですが、業務の追われると忘れがちな部分の一つだと思います。今回はそんな基本の大事な話をしていきます。

ふるまい方ひとつで契約を切られてしまった

私が過去に勤務していた訪問看護ステーションで、実際にあった話です。ある看護師のふるまいのために、訪問看護の契約を切られてしまったことがあります。

利用者さんは統合失調症の方でした。食事に毒が入っているなどの妄想の症状がありました。主治医からは、食事や水分がきちんと摂れているかを確認してきてほしいという、とても大切な指示がありました。その看護師は、訪問時はいつもきちんと正座をするのですが、その日は疲れていて、すぐに足を崩したそうです。すると利用者さんは怪訝な顔をされたそうです。看護師は「足を崩していいですか?」と言わずに、そのまま体温を測ったり食事の様子をお聞きしたりしたようでした。

するとその夜に事務所に電話が入り、「あの看護師さんは来てすぐに足を崩した。失礼じゃないか」と言われました。足を崩すことは、多くの方にとってはそれほど気にならないことだと思うのですが、その利用者さんはたいへん立腹され、「もう来てほしくない」の一点張りで、契約が終了になってしまいました。

その後、スタッフ全員で、なにげない行動で相手が不愉快になることはあるので、気を付けていかなければならないと話をしました。利用者さんは看護師の言動を妄想に関連つけてネガテイブの捉えることがあります。たとえば、「自分をばかにしている。なぜなら足を崩して座ったから」などです。だからこそ、自分の行動をきちんと説明しながらお邪魔させていただくことが大事です。

利用者さんと初対面のときに気をつけていること

みなさんは「メラビアンの法則」をご存じでしょうか? これは人の第一印象は出会ってから3~5秒で決まるというものです。まして5割以上は視覚からの情報で決まるそうです。ということは、私たち訪問看護師が新規利用者さんのお宅に「初めまして~」とお邪魔してから、3秒くらいが勝負ということになります。また、話す内容より見た目から受ける感じの良さが必要ということになります。え? 私たちは看護師という専門職なので、仕事をきちんとしていたら、別に見た目って関係なくないですか? と思うかもしれません。いえいえ、それは違いますよ。

初見でいかに感じよく、「ああ、この看護師さんに来てほしい」と思っていただけるか、これがいちばん大事だと感じています。なぜなら、病院看護師は患者さんがそこにいらっしゃる(入院している、外来に来ている)ので、そこまで気を遣う必要がないかもしれません。しかし訪問看護師は、「感じが悪いから」「冷たい雰囲気だから」「(先述した)足を最初に崩したから」など、「そんなことで?」と思うような理由で、「もう来なくてよいです」と言われるリスクが、つねにあるんです。「もう来なくてよい」と言われてしまうと、ケアにはつながらないのです。身なりを整えて清潔にして、ニコニコ笑顔で感じよく訪問する。自分たち自身が事業所の看板であることを、つねに意識してふるまうことが、事業所の存続にもかかわってきます

記録の際の目線

みなさんは訪問看護の際、看護記録はどうされていますか? 以下にご紹介するのは、私自身の失敗談になります。

そのころ私は、利用者さんの話を忘れないように、その場ですぐにタブレットに入力していました。利用者さんの話は「うんうん」と相槌を打ちながら聞いていました。そんなとき、1人の利用者さんから「あの……、さっきからタブレットのほうばかり見ていて、ぜんぜん話を聞いてないですよね……」と言われたのです。ハッとしました。

私たち看護師は、相手の話を聞くとき、患者さんと目線を合わせて向かい合い、きちんと「聞く」という姿勢になるよう習ってきました、しかしそのときは多忙さもあり、その基本を忘れていました。聞いている「つもり」だったんですね。医師の診察に対して、「あの先生はパソコンしか見ていない」という苦情があったりしますが、まさしく今回がそれでした……。

その経験があってからは、必ず利用者さんと目線を合わせて、しっかりとお話を聞いています。その最中も、メモ程度のことは書きますが、時間が終了した後で、しっかりと記入するようにしています。

今回のまとめ

以上の3つのまとめですが、見られているということを意識してふるまうことが、とても大事だということです。傾聴や対話など技術はもちろん大事なのですが、基本的な失礼の無いふるまい、また感じの良いふるまいを心がけることで、利用者さんから信頼れる看護師になれるはずです。事業所内の仲間同士でふるまい方をチェックしあったり、練習しても良いと思います。

今回は以上になります。ありがとうございました。





社本昌美
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。 訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。