みなさん、こんにちは。
先日の猛暑も和らぎ涼しくなってきました。過ごしやすい季節になると、ようやく読書などもしようかと思えてきます。私事ですが、積読が多すぎて足の踏み場がありません(笑)
買っておくと読んだ気になってしまう悪い癖を脱却したいです。

今回は、「まずはいっしょに過ごすだけでもよい」ということについて、書いていきたいと思います。

訪問看護の時間で変化や結果を出す?

看護師にありがちなのが、問題を見つけることで、「この利用者さんが困っていることはなんだろう」「解決してあげたい」という思考になることです。それは「看護展開」というものがベースにあるからだと思います。

看護学生時代に現状観察やアセスメント、問題点を抽出し、計画を立てて、評価をしていくことを口酸っぱく教えられ、病院実習でも何度も繰り返しこれを行ってきました。訪問看護の現場でも行っていることです。もちろん、遊びに行っているわけではないですし、医師からの指示にも「薬物療法の継続看護」や「生活リズムを整える援助」などと記載されています。これをもとに看護計画を立てるわけです。

しかし無理やり「問題点を見つけないといけない」「なにか看護をしていかないといけない」と思うと、本当に大切なことを見ることができないまま、過ぎていくことがあるように感じています。訪問看護の時間でなにか結果を出さないといけない、なにかしてあげないといけないと、焦っていませんか?

同じ空間を味わってみると

私も最初、こうしたことに気を取られていました。
薬は飲めているかな? 日中は眠気が強いから、起きていてもらえるようにデイケアなどすすめようかな、などです。ぐるぐると看護師の頭のなかは忙しいです。

あるとき利用者のAさんに、「絵を描いたんだけど見てくれる?」と言われました。それまで数回、訪問しており、眠れないことや対人関係の悩みなどを引き出して、解決策をいっしょに考えてきた人でした。そのAさんがイラストを出してきました。

ふと見ると、押し入れの中には大量のスケッチブックがありました。うれしそうに、「これはミッキーマウスだよ」「これはプーさん描いた」と、絵本などをもとに自分で綺麗なイラストを描いていたのです。とても色鮮やかで驚いたことを思い出します。

また壁にも数枚、絵が貼られていました。私はすべての絵をAさんといっしょに見ました。Aさんはそれぞれの絵の内容と、どんなときに描いたのかを説明してくれました。対人関係で悩んだときはこの絵を描いた、といったようなことです。

そのときに気が付きました。人は自分なりのコーピング方法を、もう持っている!それをいっしょに確認できることや、「それ、いいね!」といっしょに話せることが、精神科看護の第一歩なんだと。

そのためには、利用者さんといっしょの空間を味わうことができないと、さまざまなことに気が付けませんよね。味わうために、看護師にもまわりをゆったりと見る余裕が必要です。

その人を理解するということは、いかに同じ空間を味わえるかにかかってくると思いました。

なにかをいっしょに見たり、聞いたり、歩いたり、体操したり

ミラーリングの法則はご存じでしょうか? 同じ行動をとる人に好意を持ってしまうというものです。同じ行動をとることは、前述のAさんの場合のように、相手への理解を深めるきっかけになります。

私は訪問しているとき、いっしょにテレビや絵を見たり、ラジオを聴いたり、近所を歩いたりします。私たちはまず利用者さんに信頼していただきたいですよね。同じ行動をとることで信頼関係も築きやすいし、同じ空間を味わえるし、なにより前回お話した「沈黙」があっても大丈夫という一石三鳥の効果があるからです。

しっかりと信頼関係が築けたら、向かい合って傾聴などもできてきますが、最初はなかなかむずかしいことも多いと思います。そのときに、「問題点………? うーん……」と考えるより、同じ空間をいっしょに味わって同じ行動をしてみると、なにか見つかるかもしれません。

余談ですが、私は「この枕、いいよ!」と教えてくれた利用者さんの枕に頭を載せて寝てみたり、酵素ダイエットをしている別の利用者さんから「この酵素すごく飲みやすいし、おいしいよ!」と言われ、気になってその酵素の味見もさせていただいています(笑)

まずはいっしょに

自分は話し下手だと感じている看護師さん、多くいらっしゃると思います。でも上手に話す必要はないのかなあと私は考えます。利用者さんが見ているのは、まずはいっしょにいてくれるのかどうか、そばにいてくれるのかどうかではないでしょうか。バカにしていないか、真剣に考えてくれているか。そしていっしょに悩み考えてくれるかというところが大事なんだとも思います。

いっしょになにかを見たり、考えたり、聞いたりしてみてください。静かな優しい時間が流れていき、その次にようやく看護展開できるのではないでしょうか。

では今日はこのへんで。また次回。





社本昌美
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。 訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。