書籍『予防のためのせん妄ケア』(詳しくはこちら)の著者が、臨床で役立つせん妄の基礎知識をクイズ形式で出題・解説します。
Q
準備因子(薪:起こりやすい素因)には、どのようなものがあるでしょうか。7つ答えてください。
正解はこちら
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①高齢(70歳以上) ②認知症の既往 ③せん妄の既往
④脳の器質疾患 ⑤アルコール多飲 ⑥せん妄を惹起する薬剤
⑦全身麻酔を要する手術後か予定
【解説】
せん妄ハイリスクケア加算の流れに沿ったフローチャートには、①70歳以上 ②認知症の既往 ③せん妄の既往 ④脳の器質疾患 ⑤アルコール多飲 ⑥せん妄を惹起する薬剤 ⑦全身麻酔を要する手術後か予定、の7つの準備因子が記載されています。
問診では、認知症やせん妄について、回答者が困る場合があると思います。認知症と診断されていない場合もあるからです。また、せん妄という言葉を知らない場合もあります。質問の例を参考にしてください1)。
ただしアルコール多飲に関する質問では、本人・家族から確かな情報が得られるとは限りません。アルコールを乱用されている患者さんは、羞恥心から過小申告をする傾向にあります。AUDITというスケール2)はありますが、入院手続きをしている場面で、患者や家族に回答してもらう機会は多くありません。そのため、個人的に行っている方法ではありますが、以下の3つの質問をしています。
①「晩酌は楽しいですよね……」など、お酒にまつわる雑談を少し入れ、まずは場を和ませます。多飲しているかどうかを尋ねるのではなく、お酒とどうお付き合いしているかを尋ねてみてください(平日と休日にわけて尋ねる。平日はのんでいなくても、休日に朝から大量飲酒している場合があるため)。
②「お酒のせいで転んだり、喧嘩をしたりはありましたか?」
③「家族や友人から、やめたほうがいいといわれたことがありますか?」
②③は、AUDITの質問内容を参考に、飲酒が原因でケガやケンカをしたことがあるかという質問を雑談中にすることで、多飲であることが見えてきます。また回答の内容だけでなく、そのときの反応を観察することで、過小申告しているかどうかもみています。必要時は、スケールを使用して評価する必要はあると思います。
【参考文献】
1)井上真一郎(2022):せん妄診療実践マニュアル改訂新版.羊土社.
2)厚生労働省.アルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)とその評価結果に基づく減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引き.https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu/dl/hoken-program3_06.pdf
【執筆】
関西医科大学総合医療センター 精神看護専門看護師
書籍の案内
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サイズ : B5判 168頁
ISBN-10 : 4-8404-8522-4
ISBN-13 : 978-4-8404-8522-7
目次
・はじめに
・執筆者一覧
【第1章 せん妄はなぜ予防が大切なのか】
■1 知っておきたいせん妄の基礎知識
■2 せん妄はなぜ予防が大切なのか
【第2章 今日からできる予防の取り組み】
■1 予防のための薬剤の知識
不眠時に使用する薬剤と問題点
ベンゾジアゼピン系薬剤
オレキシン受容体拮抗薬
抗うつ薬
処方薬の整理
■2 知識を実践につなげる
せん妄の診断基準の観察ポイントを押さえる
注意と意識
変動性
認知
意識と昏睡
複数の病因
■3 外来からはじめるせん妄予防プログラム
なぜ外来からせん妄予防をはじめるのか
外来でのアプローチ
入院当日に行う評価
観察と看護計画立案
せん妄ケア
【第3章 起こってしまったせん妄への対応】
■1 明日からできるせん妄の治療
抗精神病薬を知ろう
補助療法を検討しよう
せん妄のリスクがあれば、ためらわずに薬剤を使おう
■2 せん妄のときの効果的な申し送り
不眠と不穏を見分ける
それぞれのときに使用する薬剤
治療的な申し送りで伝えること
■3 多職種で取り組む効果的な対策
精神科リエゾンチームの実際
薬剤師の役割
臨床心理士/公認心理師の役割
作業療法士の役割
医療ソーシャルワーカーの役割
【第4章 明日から使える高齢者ケアのヒント】
■1 明日からできる高齢者ケア
認知症患者さんへのかかわり
かかわるときにできる工夫
■2 地域につなぐための高齢患者のケアの見直し
高齢者を地域につなぐ
フレイルの基礎知識
フレイルを悪化させないためのケア
①睡眠
②痛み
③BPSDとの鑑別
④社会機能のリカバリ
■3 「病棟別・疾患別」の家族も含めたせん妄ケア
ICUせん妄編
一般病棟編
アルコール離脱せん妄編
緩和ケア編
【第5章 社会的な視点からみたせん妄対応】
■1 拘束・抑制と患者さんの権利擁護
一般病棟と精神科病棟の比較
身体的拘束の定義
身体的拘束の法的根拠
■2 高齢者のQOL向上のためにできること
健康寿命を延ばす取り組み
退院後のQOL低下を防ぐために
患者さんの自己効力感を高める
地域への橋わたし
引用・参考文献
索引
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