みなさんこんにちは!
前回からPCIで使用する風船についてお話ししています。
今回はちょっと変わった特殊なバルーンを紹介しますね。
スコアリングバルーンはどんなバルーン?
今回紹介するのは「スコアリングバルーン」です。
スコアリングバルーンには「刃」が付いています(図1)。
この刃の効果は3つです。
①綺麗に解離が作れる!
②石灰が割れる!
③血栓を砕く!
1.綺麗に解離が作れる!
前回、風船によって狭窄になっている動脈硬化に解離をつくるという話をしました。でも、普通の風船で解離をつくると血管の中身にヒビが入り、グチャグチャになってしまいます。そのため、拡げたところで血液の乱流が起こり、そこに血栓が付きやすくなり、再狭窄の原因となることもありました。
そこで、スコアリングバルーンには刃が2本、またはらせん状に巻いたワイヤーなどが付いており、その刃やワイヤーの部分が動脈硬化にまず当たり、そこに集中して力が加わることによって、その部分に解離が入ります。そのため、スコアリングバルーンで広げた後は、綺麗に刃の部分だけ解離が入るっていう仕組みになっています。
2.石灰が割れる
石のように硬い石灰化の動脈硬化は、普通の風船では割って拡げることができない場合が多いです。その状態でステントを入れても、ステントが広がらず凸凹のまま留置されることになります。
スコアリングバルーンの刃を石灰に押し付けることによって、ある程度の厚さであれば石灰を割ることができます。スコアリングバルーンで石灰を割っておけば、完全に拡がっていなくてもステントはある程度まで広がってくれることが期待できます。
3.血栓を砕く!
急性心筋梗塞の場合、大きな血栓が詰まっていることがあります。そんなときにスコアリングバルーンを使うと、その血栓を砕くことができる場合があります。大きな塊の血栓は血流の妨げになるので、下処理として使われる場合もあります。
もう一つよく登場する場面は、ステント内狭窄です。ステント留置した後に、そのステント内が細くなるISR=インステントリステノーシスの場面です。ステント内には新生内膜と呼ばれる新たな組織に覆われていることがあります。その組織をぶった切るためにスコアリングバルーンを使用します。
スコアリングバルーンを拡張するときには、普通のバルーンとは異なり、徐々に徐々に拡張していきます。1~2秒に1気圧づつぐらいです。スコアリングバルーンの刃を勢いよく血管内膜に当てると標的前後にも解離を進展させてしまいます。そのためにゆっくりと拡張していくんです。
スコアリングバルーンは、普通のバルーンでは太刀打ちできない場合にも登場します。うまくスコアリングバルーンの効果が得られれば治療成功に大きな貢献をするでしょう。
ただし、スコアリングバルーンには刃が付いているために、普通のバルーンよりも血管に入っていく通過性がどうしても悪くなってしまいます。仕方がないですけどね。
今回は特殊なバルーンとして、スコアリングバルーンを紹介しました。
みなさんの施設にはどんな種類のスコアリングバルーンがあるのか聞いてみましょう!
今回はここまで!
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。