みなさんこんにちは!
ここまで4回にわたっていろいろな風船を紹介してきました。
では風船治療のときに私たちはどのようなところを見ていたらいいのでしょうか?
今回は、具体的な私たちの仕事についてお話ししていきますね。
風船治療のときの私たちの目線
風船治療のときの私たちの目線は次の1~4です(図1)。今回の前編では1と2についてお話しをします。
1.症状
2.心電図変化
3.その他のバイタルサイン
4.冠動脈造影 透視・撮影画像
1.症状
①拡張前の声かけ
まずは風船を膨らませる前に患者さんに「胸が痛いとかの症状が現れるかもしれません。何かあったら教えてくださいね」と声かけをしておきます。突然症状が現れたら患者さんはビックリしますので、不安がらない程度にあらかじめ伝えておくことが大切ですね。
②症状確認は拡張してちょっとしてから
風船を膨らませ始めてちょっと経ってから症状を確認しましょう。ちょっとってどれくらいか? 風船の拡張によって血流が遮断されて、心筋が虚血(心筋に血液が滞っている状況)になったときに症状は現れ始めます。
風船を膨らませてすぐに「胸は痛くないですか?」と患者さんに聞きに行くシーンを目にしますが、冠動脈の血流を遮断しただけでは症状が現れることは少ないように思いますので、“ちょっと経った”ときに症状は聞きに行くようにしましょう。
目安は2回目の風船拡張や30秒以上の拡張をしているとき、また心電図が変化し始めたときです。もちろん患者さんが苦痛のある表情をしているときには症状を聞きに行くようにしましょう。
③どんな症状?
日ごろ患者さんが感じている症状を確認します。例えば、左肩が凝るというような症状を日ごろから感じている場合は、同じ症状かどうか? といったことを、もちろん誘導尋問にはならないように、うまく感じていることを引き出します。
ふだん感じている症状と似た症状であれば、いま拡張している部分がふだんの痛みの原因であることが推測されます。ただし、経験的に痛みの強さの度合いはふだんとは異なることが多い印象にあります。
2.心電図変化
心電図変化についてはこれまでにも#012や#013でお話ししましたので、まずはそのページを読んでみてください。
さて先ほど1-②お話ししたように、風船を拡張することにより冠動脈の血流が遮断されます。それによって心筋が虚血になってしまい、次第に心電図が変化していきます。
心電図は次の1)~3)の順で変化していきます
1)T波が増高
2)ST低下
3)ST上昇
「ST上がってきたら教えて」って言われ、ST上昇を必死に探してしていたら、他の人にST上がっているよ! と先越されちゃうことってありますよね。
そんなときには1)2)3)の心電図変化の過程を知っていれば、誰よりも先に心電図変化をコールすることができます。
T波が増高したことに気づけば、その後すぐにSTが上昇してくるはずです。T波増高してきたときに「心電図変化してきてます!」って誰よりも先にコールすることができますよ。
今回は風船を膨らませているときの私たちの目線の前編をお話ししました。
残りについては、また次回お話しすることにしますね。
次回もぜひお付き合いください!
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。