みなさんこんにちは。
前回はDCAってどんなもの?というお話をしましたが、今回はそのDCAのときに、私たちカテスタッフはどういうことに目線を向け、何に注意しなくてはならないのか。具体的な私たちの行動についてお話ししていきたいと思います。
1.カテーテルのウェッジ=血流遮断に要注意!
前回お話ししましたが、DCAは金属の硬い太いデバイスです。冠動脈にこのDCAを挿入しようとすると、ガイディングカテーテルがしっかりと入っていないとカテーテルが押し戻され跳ねてしまいます。
ガイディングカテーテルは、冠動脈にスッポリと入るしっかりとしたものを選択します。また、7Fr以上のカテーテルが選択されることから、冠動脈入口をカテーテルが塞ぎ、血流が遮断されることがあります。この状態を「ウェッジ」しているといいます(図1)。
①カテ先圧を観察
カテーテルが冠動脈にエンゲージ(挿入)されたら観血血圧をみましょう。波形が左心室圧波形のような形をしていたり、圧波形の山が平だったりしたら要注意です。
⇒施行医に「ウェッジしてます!」って伝えましょう。
②心電図も注意
仕方なく、わざとウェッジさせてカテが進行する場合があります。ウェッジさせてしばらく時間が経過した場合は、心電図の変化にも注意しましょう。血流遮断しているため、心筋虚血が起こります。
⇒STの変化や不整脈の出現に注意しましょう。
ちなみに……
ウェッジした後のIVUSでは、入口部が解離していないかをしっかり確認しましょう。
2.いつもは膨らませた時だけだけど……
風船やステントのときは拡張させた際に秒数を数え、ST変化などの心電図変化に注目しますが、DCAのときは違います。
何度も言いますがDCAは太いデバイスです。DCAが入るだけで血流が遮断されて心筋虚血が始まることが多くあります。
①心電図の変化に要注意
DCAが入っただけで心電図変化していきます。
・ST上昇が認められたら施行医に伝えましょう。
⇒ ST変化が大きくなったら「さらにST上がってます!」って伝えましょう。
・不整脈が認められたら施行医に伝えましょう。
⇒特にPVC(心室期外収縮)が出現したらすぐに伝えましょう。
②患者さんの症状を確認
心電図が変化していたら特に症状が出てくる場合があります。
⇒胸が痛くなる場合があります。その際は「治療のためですからね」と伝えましょう。
③血圧の変化に注意
血圧が変動し出したら施行医に強く伝えましょう。
血圧が下がり出したらとても危険です。
⇒昇圧剤の準備をしておきましょう。
3.削る方向に注意
特にIVUSを観察するスタッフは、プラークの方向をきっちり把握しましょう。IVUSの画像とアンギオ画像をリンクさせ、枝とプラークの位置関係、心臓外膜側・内膜側とプラークの位置関係を把握したうえで、DCAのカッターの方向と削りたい方向を施行医とともに共通認識し十分確認したうえで削ります。
テストカットした後のIVUS画像では削れた方向を確認するため、治療前初めのプラークの形とその位置を確認し、この後のIVUSを行う際に同じところで削り具合を評価できるように準備しておきます。
追加で削るかどうかは、残るプラークの面積(プラークエリア)で決められます。施行医に目標プラークエリアを確認しておき、毎回同じ計測ポイントでプラークエリアを計測しましょう。また、より多く削れたポイントを探し、これ以上削ることに危険性はないか確認しましょう。
①プラークの形
②枝とプラークの位置関係
③心外膜・内膜側とプラークの位置関係
④計測ポイントの決定
⑤プラークエリアの計測
⑥過剰に削れていないかを確認
4.冠動脈破裂
DCAによって過剰に削られた場合、健常な血管壁を削ってしまい、冠動脈破裂が起こったり、中膜を削ることにより瘤化してしまうことがあります。
冠動脈破裂が起こった場合は、パーフュージョンバルーンを拡張させ破裂部分を塞ぐか、カバードステントを留置するか、もしくは緊急開胸手術によって破裂部分を修復しなくてはなりません。いずれにしても、PCPSなどの補助循環の導入や心嚢穿刺をしてドレナージする必要がある場合もあります。
ここまでお話ししたように、DCAはPCIのなかでもさまざまなことが起こる可能性が比較的高い治療で、よりチーム力が求められる治療です。一人ひとりのスタッフが起こり得ることを想定し、いち早く変化に気づき、合併症を未然に防ぐことが非常に大切です。
みなさんもチーム医療に参加し、「あなたが気づいてくれて助かった!」と言われるような仕事をしましょう!
今回はここまで!ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。