みなさんこんにちは。
前々回(#053)、前回(#054)とさまざまなプラークに応じた特殊なデバイス=デバルキングデバイスについてお話ししてきました。今回はロータブレーターについて紹介します。
出番は全周性の石灰化
ロータブレーターとは、ずばりドリル!動脈硬化をウィーンと削るデバイスです。
動脈硬化のなかでも、石灰化(カルク)を削るのがこのデバイスの仕事です。プラーク(動脈硬化)は、カルシウムがお好みなのか、プラーク内にカルシウムを取り込んでいきます。取り込んでいくなかで、次第に石灰化して、プラーク内が石の塊のような形でどんどん大きくなっていきます。分厚くなる場合もあるし、長〜〜〜くなっていくこともあります。そして、それが血管の内側360°グルっと全周性に作り上げられる場合もあります。
分厚く、長く、そして全周性に石灰化ができたときにロータブレーターの出番です。
最近は、心カテ前に冠動脈CTを行うことが多いと思いますが、CTで石灰化はピッカリと白く光っているのでよくわかります(図1)。ちなみに、先ほどもお話しした通り、石灰化はプラークにカルシウムが取り込まれることによって作られるので、CTで白く光っている石灰化があるってことは、そこに石灰化にはなっていないプラークもあるっていう証拠になります。
石灰化があると、血管の内腔はわかりづらくなるので、どれくらいその石灰化が血管を細くしているのか? は逆にわかりづらくなります。
CTでは、どれくらい長く石灰化が続いているか? 冠動脈のどこに石灰がついているのか? を確認することができます。逆に石灰化は冠動脈造影では詳細はわかりづらいです。ロータブレーターをするかどうかという予測のため、カテ前の情報収集として、CTでの石灰化の確認は大切なことかもしれませんね。
イメージングデバイスによる判断
ロータブレーターが必要かどうかは、IVUSやOCTなどのイメージングデバイスでわかります。IVUSでは、石灰化が全周性に付いているかどうか? ある程度の分厚さを判断することができますが、OCTのほうがくっきりと石の固まりとして観察することができることが多く、分厚さまではっきりわかるので、ロータブレーターをしたときにどれだけ削れたかを観察するために使用することもあります。
あとは、イメージングデバイスのカテーテルが通過するかどうかもロータブレーターを施行するかどうかの判断材料になるのかもしれません。イメージングカテーテルが通過しなければ、風船などが通過しない場合もあり、たとえ通過したとしても硬い石灰化があるために、風船ではその血管を広げるのは難しくなることが予測されます。風船では歯が立たないときにはローターブレーターが活躍します。
また、石灰化があればどこでも削れるのかというとそうではありません。血管が細かったり、強くカーブしているところ、そもそもガイドワイヤーが通過しない場合や、ガイドワイヤが通過してもマイクロカテーテルを挿入することができず、ガイドワイヤーを専用のワイヤーに交換できない場合などは、ロータブレーターをすることはできません。
今回は、ロータブレーターを行うときと行わないときなどをテーマにお話ししました。
ロータブレーターを行うためには、いろいろと準備しなくてはなりませんね。オペレーターの先生から「ローターするよ!」って言われてから準備していたら時間がかかってしまうので、ある程度予測して準備しておくといいかもしれません。
次回も引き続きロータブレーターについてお話しします。
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。