みなさんこんにちは。
前回は急性心筋梗塞に併発する右室梗塞の見つけ方についてお話ししました。

今回は、では右室梗塞の疑いがある場合はどのような治療が行われるのかについてお話をさせていただきたいと思います。

右室梗塞の治療

右室梗塞の治療は、右室の前負荷の早期維持・右室の後負荷の低下・強心薬による右室機能障害の治療・房室同期の維持が原則になります。そのためには、まずは詰まっている冠動脈の早期治療・再灌流がたいへん重要になってきます。

どの急性心筋梗塞も同じことですが、できる限り急いで緊急カテーテルに繋げることが大切です。

また右室前負荷の早期維持を目的に、生理食塩液または低分子デキストランによる急速大量輸液が行われ、左室への前負荷を増加させます。つまりボリューム負荷により拍出させるための血液を稼ぐということです。ただし、闇雲に大量輸液すると、心室中隔が左室側に圧排されることによって左心室の容量が小さくなり、逆に血行動態が悪化することがあります。

大切なのは、輸液をした分だけバイタルサインが安定するかどうか、必ず常に判断すること。輸液を続けたときに逆にバイタルサインが崩れてしまわないかをモニタリングし続けることです。

この急速大量輸液を500~1,000mLしたときに、その反応が認められない場合にはカテコラミンやIABP・右心補助心臓の適応の判断が必要になってきます。

また、硝酸薬や利尿薬の投与は著明な低血圧を引き起こす危険性があるため、極めて慎重に行われるべきもので、投与された場合には引き続き特に注意深くモニタリングする必要があります(図1)。

図1

右室梗塞のもう一つの判断方法

右室梗塞かどうかを判断する方法は前回でもお話ししましたが、もう一つ大切な判断材料についてお話ししておきます。

それは心電図での判断です。通常は12誘導心電図によって急性心筋梗塞(STEMI:ST上昇型急性心筋梗塞)かどうか判断されますが、そのなかでもⅡ・Ⅲ・aVFでST変化が認められた場合、下壁の急性心筋梗塞であることが疑われます(#013参照)。

このときに、胸部に貼っているV1-6の電極のうちV1よりも右手側に2つ電極を貼り、V3R・V4Rと呼ばれる誘導を追加します。このV4RでSTの変化が認められたときには、右室梗塞の状態であることが疑われます。これが最初の段階で記録されていたときには、この後、右室梗塞についての対処も同時に行うことができますので、患者さんの予後に大きく関わる情報となるでしょう。

右室梗塞は急性心筋梗塞のなかでも超重症な状況と言えます。正しく知識を持ち、それを活かすことによって、患者さんの命が救われるかもしれません。私たちにできること精一杯やっていきたいですね。


さて、いまでは多くのみなさんに読んでいただいているこの『心臓のはなしをしましょうか』は2020年12月末にスタートいたしました。ちょうど今回で丸3年、2週間に1回、これまでに79回配信させていただきました。これだけ続けることができたのも、いつも読んでいただいているみなさま、メディカ出版担当者さまのお陰と感謝しています。

また、おかげさまでこの連載が元になった書籍まで出版させていただくことができ、本当に感謝でしかありません。

年が変わって2024年から『心臓のはなしをしましょうか』は新しく生まれ変わって、またみなさまにお付き合いいただこうと考えています。リニューアルした『心臓のはなしをしましょうか』もぜひご期待ください!

ひとまず、本当にありがとうございました。
では!また!

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。