心臓に張り巡らされた冠動脈

ヒトはご飯を食べてエネルギーを摂っています。
クルマはガソリンや電気をエネルギーとして動いています。
では、心臓のエネルギーは??


血液です。

心臓の筋肉(心筋)は、血液をエネルギーとして動いています。

心臓の表面には血管が縦横無尽に走っており心筋に血液を届けています。それが冠動脈(冠状動脈)です。まるで心臓に冠を被ったように血管が載っかっているから、冠動脈っていうらしいです。

冠動脈は大きく分けて右冠動脈と左冠動脈の2本あり、さらに左冠動脈は左前下行枝と回旋枝に分かれます。冠動脈は「右冠動脈と左冠動脈の左前下行枝、回旋枝の3本があります」と表現されることが多いですね。

3本の冠動脈のメインストリートは心臓の4つの部屋の境界を走っています。

右冠動脈(図1の黄色の線)は、右心房と右心室の境界を心臓の前面から後面にグルッと廻り右心室と左心室の境界を走ります。

左前下行枝(図1の赤色の線)は、心臓の前面、右心室と左心室の境界。

回旋枝(図1の青色の線)は、左心房と左心室の境界を前面から後面に向かっていきます。

こうして3本の冠動脈は、ラグビーボールのような形をした心臓に余すところなく張り巡らされ、栄養を送っているのです。

冠動脈が心臓に余すところなく血液を送り届ける

心カテで冠動脈を造影(CAG)すると図2のように冠動脈は映し出されます。

右冠動脈は、前述通り右心房と右心室の間を通ってぐるっと後ろ側へ、そして心臓の下の壁に向かって最終的には心臓の先っちょの方へ伸びています。

左前下行枝は、心臓の前側の壁をまっすぐ心臓の先っちょの方へ向かって伸びています。

回旋枝は、左心房と左心室の間をぐるっと後ろ側に向かっていっています。

それぞれの血管からは側枝が生えています。それぞれは、メインストリートがカバーし切れていないところに向かって走行しています。

例えば、右冠動脈からは入口付近に洞結節動脈という側枝が存在します。その名の通り、刺激伝導系の洞結節を栄養している血管です。その他にも右室枝(RVブランチ)と呼ばれる側枝もあります。

左前下行枝からは、対角枝や中隔枝、さまざまな側枝が枝分かれしています。冠動脈の名前や番号については、また次回詳しくご紹介したいと思います。

冠動脈造影では、メインストリートから出された太めの側枝までが映し出されますが、それでも造影され映し出される血管は冠動脈のほんの一部なんです。

じつは、冠動脈からは無数の微小(毛細)血管が生えていて、心筋にくまなく栄養が行き渡るようになっているんです。



心臓の代表的な疾患に狭心症がありますが、多くの狭心症は冠動脈の大きな血管に動脈硬化が作られることによって血管が細くなり、心筋に血液が行き届かなくなるのですが、まれに、狭心痛のような症状を訴えられる患者さんの冠動脈を造影しても動脈硬化が見当たらない場合があります。

この時、疑われるのは、この微小血管が一時的に収縮するために細くなる微小血管狭心症です。30代半ばから60代半ば(多くは40代半ばから50代前半)の女性に多く見られます(微小血管狭心症の約70%)。この時期は、エストロゲンが減少し始めることも関与していると言われ、精神的ストレスなども誘因の一つになると言われています。

狭心痛は数分で治ることが多いですが、微小血管狭心症の症状は数時間に及ぶことも多く、典型的な狭心症症状ではないことや、発作時の心電図変化も乏しい、冠動脈造影(冠動脈CT)にたどり着いても冠動脈狭窄は見つからないことから、精神的なものや、消化器疾患を疑われたり、はたまた整形外科へと診断に難渋することもあります。

心臓は筋肉の塊。筋肉は血液によって栄養をもらい、がんばって、がんばって動き続けています。血液の届いていない心筋はありません。冠動脈は、心臓全体に余すことなく血液を届けているのです。

今回はここまで。
今回もお付き合いありがとうございました。

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。