動脈硬化のリスクファクター

食生活には気をつけよう。
体重落とさなきゃ。血圧高め。なぜ?
なぜ、食生活に気をつけなければならないの?
なぜ、血圧は高かったらダメなの?
今回は動脈硬化についてお話ししていこうと思います。

動脈硬化とは、心筋梗塞・狭心症の原因となるものです。では、いったい動脈硬化はどのようにして作られていくのか?

動脈硬化のリスクファクター(危険因子)は、高血圧・糖尿病・喫煙・脂質異常症などが挙げられています。これらが問題だから心筋梗塞になりやすいんですよね。

では、高血圧・糖尿病・喫煙・脂質異常症の何が悪いんでしょうか?

動脈血管の構造も知っておこう

まずは、動脈血管について考えてみましょう。動脈血管の壁は3層構造になっています(図1)。いちばん外側はがっちりと外膜が血管を守っています。3層構造の真ん中は、まるでゴムのような伸び〜る中膜があり、いちばん内側には血液と接する内皮細胞とともに、“うすうす(薄々)”の内膜が存在しています。



血圧は常に変動し続けています。寝ているとき、運動したとき、興奮したとき、リラックスしたとき。そのときの状況に応じて変動する血圧に柔軟に対応するのが、中膜の役割なんです。でも伸びっ放しではいけません。中膜をガッチリ外側から支えるのが外膜。そんじょそこらのチカラでは血管が破裂しないように、外膜がガッチリと守っているのです。

一方、内膜・内皮細胞は繊細な“うすうす”の膜です。何らかの影響により、すぐに内膜はダメージを受けてしまいます。

では、何らかの影響とはなんでしょう?!

前述したように、リスクファクターには高血圧・糖尿病・喫煙がありましたが、たとえば、高血圧は文字通り血圧が高い状況です。血圧が高い、つまりそれは血管に常に高い圧がかかっていることになります。ある程度は中膜が柔軟に対応してくれて、外膜がガッチリと守ってくれるのですが、高い圧の状況が長く続くと、3層構造のうちの、いちばん脆い内膜・内皮細胞にひびが入ってしまいます。これが動脈硬化の始まりなんです。

ちなみに、この内膜・内皮細胞のダメージは、高血圧でなくとも10歳代後半から始まると言われています。これを読んでくれているあなた! まだまだ私は若いもん! って思ってるかもしれませんが、もうすでに始まっていますよ。動脈硬化!

話を戻して。高血圧の方は特に内膜のダメージが大きく、ひび割れがひどくなるのですね。糖尿病は組織を脆くするような性質の病気なので、内膜・内皮細胞にダメージを受けやすいんです。喫煙も血管を縮こませたりするので血管にとって良くないんですね。 内膜・内皮細胞にダメージを受ける。これが動脈硬化の第1ステップです。

コレステロールの悪い奴と良い奴

では第2ステップ。

コレステロールが高いねん。とかよく聞きます。皆さんもよく知っているようにコレステロールには、悪い奴と良い奴の2種類いるんですね。それが悪玉(=LDL)コレステローと善玉(=HDL)コレステロールです。

「コレステロール高いねん」の高くてダメなのが、LDLコレステロールですね。LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割をしています。これが高いと動脈硬化の要因となります(詳しくはのちほど)。

一方、HDLコレステロールは増え過ぎたコレステロールを回収もするし、血管壁に溜まったコレステロールを取り除くこともしてくれる、めちゃくちゃいい奴なんです。

ちなみに、LDLを減らし、HDLを増やすためには、食生活が大切なんですね。豆腐・納豆の大豆タンパクはLDLの吸収を抑えます。アジやサンマなどに代表されるDHA(ドコサヘキサエン酸)などは、HDLコレステロールを下げずにLDLコレステロールを下げるんですって。 さぁ、サバ食って豆腐食べよ。

LDLとHDLの危険な数値

さてさて、LDLコレステロールが動脈硬化の要因のようですが、表1にあるように、LDLの指標は140mg/dLがキーポイントのようですね。LDL140以上で高コレステロール血症ということで脂質異常症になるようです。でもこの数値は健康な人(まだ心筋梗塞などを診断されていない人)に当てはまる数値のようで、すでに心筋梗塞などの動脈硬化性の疾患を診断された人は、LDLを90以下にすることが再発防止に大切のようです。



とにかく、LDLは高いとダメなんです。一方、HDL(善玉)はどうでしょう。HDLの場合は前述した通り、コレステロールを回収してくれる働きをしているので、多いほうがいいんですね。40mg/dl未満になると低HDLコレステロール血症となり、これも脂質異常症になるんですね。

表2を見てください。これは、血管に動脈硬化が存在するかどうかを予測できる簡単な計算式です。LH比っていうんですが、LDLとHDLの比なんですね。分母にHDLの数値を、分子にLDLの数値を持ってきて割るだけです。

この式で出てきた数値が1.5以下であればセーフです。2.0以上であればイエローカード。コレステロールが血管内に溜まっている可能性があります。2.5以上であればこれはこれは要注意ですね。急性心筋梗塞を起こし、突然胸が痛くなったりするかもしれません。




そんなこんなで、お時間がやってまいりました。
今回は動脈硬化のできはじめの部分をお話しいたしました。次回はこのコレステロールがどのようにして血管に溜まるのか? ということをお話ししていこうと思います。

動脈硬化は、血管の内側にコレステロールがネッチョリとくっついているんだ! と思っているあなた!(私は長年そう思っていました……) 次回も必見です!どうぞお付き合いお願いします。

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。