さてと。
みなさんいかがお過ごしでしょうか?
どのような状況でも病は襲ってくるもので、急性心筋梗塞発症も自粛はないようです。
今回は、いよいよ多くのみなさんが苦手と耳にする心電図のお話をしていきたいと思います。
前回(#011)で、ST上昇型心筋梗塞(=STEMI〈ステミ〉)のお話にふれました。急性心筋梗塞のなかにも心電図のST部分が上昇している場合と上昇していない場合に分類され、治療に入る迅速性が変わってきます。STEMIは特に「急げ!」のサインなんですね。
では、STEMIの示す「ST上昇」とは?今回はSTが上昇するまでの様子をマンガで描いてみました。本文と合わせて観てみてください。
マンガでわかるST上昇
①冠動脈が詰まっちゃいました。
②詰まった先の心筋に血液が届かなくなり心筋が虚血になってしまいます。 心筋虚血は心筋の内側「心内膜側」から起こります。
③ 心筋虚血が起こるとダメージを受けたところからダメージを受けていないところに向かって傷害電流っていう電気が発生します。
④心電図はこの傷害電流によって波形がグイッと持ち上げられます。
【おまけ解説】心電図は心臓から発せられた電気信号を感じ取り波形を作っています。体表面心電図は体の表面(皮膚)に電極を貼りますよね。この電極に電気信号が近付いてくれば波形は上向きに。逆に電極から電気信号が遠ざかっていけば波形は下向きになります。通常の心臓から発せられる電気信号に加えて、傷害電流が流れた分、心電図の波形が上向きに持ち上げられたのですね。
⑤で発生した傷害電流は心臓の拡張期には流れないっていう特徴があるので、 波形のST部分は持ち上げられず元の基線に残ります。
【おまけ解説】心電図QRSTのなかでQからRの部分は心室の収縮期にあたり、SからTの部分は心室の拡張期にあたります。そもそも波形が持ち上げられたのは、傷害電流が流れたから、その分持ち上げられたので、拡張期には傷害電流が流れないっていうことは心室の拡張期部分であるSTは持ち上げられないっていうことになります。
⑥できあがった波形は「STの低下」
【POINT】心筋虚血の始まりは心内膜側。心筋虚血の始まりはSTの低下から!
⑦心筋虚血はどんどん進んでいき心筋虚血の範囲はどんどん広がっていきます。心内膜側(心筋の内側)から心外膜側(心筋の外側)へと広がっていきます。
⑧心筋虚血が心外膜側まで広がっても傷害電流は流れます。虚血のある部分から虚血のない部分へと。虚血部分から遠ざかるように傷害電流が流れていきます。
⑨心電図の電極から傷害電流が遠ざかっていくので、波形はグイッと持ち下げられます。
⑩やっぱり拡張期には傷害電流は流れません。そのため、ST部分は持ち下げられません。できあがった波形をみると、、、ST上昇!
【POINT】心筋虚血が進むとST上昇を認める!ちなみに、冠動脈が完全に詰まった場合のST低下から上昇までは数秒で変わります。
今回はSTが上昇するメカニズムについてお話ししてまいりました。
おわかりいただけたでしょうか?
ST上昇は心筋虚血のサインです。
ST上昇を認める胸痛患者さん(=STEMI)はとにかく急いで治療へ!
おやおや?!この「メディカLIBRARY」で心電図について楽しく・詳しく解説いただいているページがありますね! 白石拓人先生の「シンプルに考えたら心電図が好きになる!」は、私自身も毎回アップデートを楽しみにしていて勉強させていただいています。
とてもわかりやすくシンプルに心電図について解説されていますので、勝手に、、、ではありますがリンクさせていただきます! まだチェックされていない方がいればぜひ!白石先生に心電図について教えてもらってください!心電図が好きになるかも!
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。